03/22FRI

LAB

ブランドパーパス「LIFE IS YOUR TIME」を掲げて、
地域企業のイノベーション創出を支援する
仙台市のX-TECHイノベーションプロジェクト

X-TECHイノベーションプロジェクトとは、AIやIoTをはじめとする先端IT技術とさまざまな産業との掛け合わせによって、新事業の創出を目指すプロジェクト。
テクノロジーの力でイノベーションを生み出し、仙台・東北で暮らす人々が豊かさを実感できる未来を目指す仙台市の事業です。

 
同プロジェクトは現在、ブランドパーパスとして『LIFE IS YOUR TIME』を掲げ、事業のブランド化に取り組んでいます。『LIFE IS YOUR TIME』とは「あなたの時間をどう使うか」という意味なんだとか。

 
今回は、ブランドパーパスの策定に携わった氏家物産株式会社の氏家 聡史(うじいえ・さとし)さん、X-TECH事業の企画・運営に携わっている株式会社 zero to oneの代表取締役CEO 竹川 隆司(たけかわ・たかし)さん、仙台市経済局産業振興課長の久本 久(ひさもと・ひさし)さんに、ブランドパーパスを策定した背景や「LIFE IS YOUR TIME」に込められた思いについて伺いました。

 
SENDAI SIDEではブランドパーパスについて、IT SIDEではX-TECHイノベーションプロジェクトの取り組みについて、深堀りします。

 左から眼鏡をかけたカジュアルな服装の氏家物産株式会社 代表取締役 氏家 聡史さん、赤いネクタイを締めているスーツを召した仙台市経済局産業振興課長 久本 久さん、紺色のスーツを召した株式会社 zero to one 代表取締役CEO 竹川 隆司さん左から氏家物産株式会社 代表取締役 氏家 聡史さん、仙台市経済局産業振興課長 久本 久さん、株式会社 zero to one 代表取締役CEO 竹川 隆司さん

事業の浸透のために策定したブランドパーパス
「LIFE IS YOUR TIME」に込められた思い

INTILAQ東北イノベーションセンターの外観、白い外壁に赤色でINTILAQ東北イノベーションセンターのロゴが入っている今回の取材場所の、INTILAQ東北イノベーションセンター

 

2018年からX-TECH事業を開始されたとのことですが、2023年にブランドパーパスをつくることになった経緯を教えてください。

  • 久本さん:仙台市では現在、X-TECHイノベーションプロジェクトのほか、防災に関する「BOSAI-TECH」やヘルスケアに関する「HEALTH-TECH」など、分野を特化したいろいろな関連プロジェクトを行っています。しかし、周りからはそれぞれが独立して動いているように見えていて、全体像が分かりにくい状態でした。そこで、これらのプロジェクトを通じてどのような価値を提供するのか、全体像をきちんと伝える必要があると感じました。

    また、X-TECHイノベーションプロジェクトについても、2021年からはZero to Oneさんにも運営に参画いただき、よりAIにフォーカスしたX-TECHに取り組んできました。参加者からはとても高い評価をいただく一方で、情報発信の弱さをご指摘いただくこともあったため、ここから取組みを広げていくために事業の目的(ブランドパーパス)を言語化することにしました。

 ブランドパーパス「LIFE IS YOUR TIME」のロゴと、日本語と英語で「人生はあなたの時間。」とコピーが記載されている。X-TECH事業のHPに掲載されているブランドパーパス「LIFE IS YOUR TIME」

 

どのようにブランドパーパスを策定していったのでしょうか?

  • 氏家さん:今回は変数を多く用いました。変数というのは言葉を掛け合わせていくための表現の要素です。例えば、「グローバルシティになるためには、まず英語ができることが求められるので、英語表記を取り入れよう」といった細かい事柄から調べました。
    他にも、シリコンバレーなどのグローバルシティと呼ばれる海外の都市、福岡市の事例や企業ブランディングについても調べました。その上で、自分たちのグローバル化に対する比重や他の地域とどう差別化すれば良いのかという、戦略的なところまで話し合いました。

    他の地域との違いを検討したとき、X-TECH事業だけでなく土地や風土や人に関しての「仙台らしさ」が何かについても話が派生しました。それは、皆さんとディスカッションしていく中で多く出てきたキーワードが「住み心地」や「心地良さ」といった情緒的なフレーズだったからです。仙台市民の目線が入ることで、仙台で暮らす方にも共感いただけるブランドパーパスへと発展したのです。

    会社の場合もそうなのですが、事業を進めるうえでブランドコンセプトは非常に重要で、物ごとの判断基準となるような概念をきちんと整える必要があります。X-TECHの活動が「何のためにあるのか」、「この活動を通じてどこに向かおうとしているのか」を考えた時に、「ちょうどいい街」の実現につながっていくのではないかと感じました。
    そこで、仙台市に住んでいる人にも、仙台から離れている人にも多く共感を得られるような言葉『LIFE IS YOUR TIME』にたどり着きました。行政が打ち出すブランドパーパスとしてはパンチが効いていて、世界の事例を調べた中でも差別化されています。

 座って話している氏家さん氏家さんは、大手企業のブランディング支援などこれまで多くの企業支援に携わってきた

  • 竹川さん:策定には半年くらいかかりました。それだけ綿密な調査とヒアリングが行われ、最終的に導き出されたのが『LIFE IS YOUR TIME』なんです。

  • 氏家さん:今は広告が流れても、全員が影響される時代ではありません。価値観が多様化してきて、自分にとって必要かどうか、自分のライフスタイルにとってふさわしいかどうかといった基準で判断するようになりました。日本でも選択の基準が自分中心になってきています。そういう状況なので、人々の選択肢の中にまず「仙台市」が入らないと、X-TECHに気づいてもらうことすらできません。多くの人に興味を持ってもらえるように『LIFE IS YOUR TIME』という情緒的な言葉にしました。

  • 竹川さん:X-TECHだからといって、パーパスにTECHを使うと対象を狭めることになってしまいます。間口を広げるために、あえてLIFEやTIMEという言葉を使ったことで、X-TECH事業を人生やキャリアの選択肢の1つとして捉えてもらえたらなと考えました。テクノロジーは基本的に自分の時間を確保したり、有効に活用したりするための手段です。『LIFE IS YOUR TIME』とは「あなたの時間をどう使うか」という意味。そのためにはX-TECHという選択肢もあるんだ、ということが伝わっていくと良いですね。

  • 久本さん:X-TECH事業は仙台市の経済部門としての取り組みではありますが、「自分の時間を心地よく過ごせる」「挑戦する機会も提供されている」というような、選択の幅が広いという街の魅力を伝えていくことが大事なことだと思っています。

 座って話している竹川さん竹川さんは、AI・デジタル分野を中心とした教育プログラムを開発、提供している。X-TECH事業にも企画・運営として関わる

『LIFE IS YOUR TIME』といえば仙台、
と言われるくらい内外に広めていきたい

座って話している久本さん久本さんは、X-TECH事業の他にも企業の海外販路開拓支援なども担当している

 

『LIFE IS YOUR TIME』はビジネスに限らず、いろんな場面で共感を得られそうな言葉ですね。この言葉をどのような方に届けたいですか?

  • 氏家さん:仙台の方々にとって合言葉のような共通概念になると良いと思います。この言葉を誇りに感じてもらえるようになってほしいです。

  • 久本さん:外から見た仙台の良さも大事ですが、仙台で暮らしている方やビジネスで関わっている方が仙台の良さを実感し、豊かに暮らすことがまずは大事だと思います。それができれば自ずと外の方にも魅力が伝わっていきます。まずは、仙台の方々へ届けていきたいですね。

  • 竹川さん:そして、仙台市全体のパーパスになったら嬉しいですね。『LIFE IS YOUR TIME』といえば仙台市、と言われるぐらいに自然と内外に認識されるような状態になるのが理想です。

  • 久本さん:実際にX-TECH事業以外の事業でもこのパーパスを使い始めています。あるイベントに参加してくださった若い方が、このパーパスに共感したと言ってくれたのが嬉しかったです。今後は市役所全体に広めていきたいです。

 INTILAQの内装座席が段々と並んでいるINTILAQでは「起業家育成・⽀援」を⽬的とした活動を行っており、ワークスペースの貸し出しやイベントを開催している

 

ブランドパーパスが完成し、今後はどのような展望をお持ちでしょうか。

  • 竹川さん:『LIFE IS YOUR TIME』を掲げた以上は、パーパスに沿った活動を行っていくのが当然だと思っています。いろいろな方の挑戦を後押しできる、そんな心強い存在になっていきたいですね。X-TECHではすでにIT企業に限らず、人材育成や企業へのサポート、地域企業の事業創出支援にも取り組んでいます。

  • 久本さん:TECHというと、ハードルが高い印象を持たれがちですが、X-TECHの各種プログラムは、IT企業に限らずいろんな業態の方にご参加いただけます。今後はさらに幅を広げていきたいですね。テクノロジーの活用によってビジネスの選択肢が増えますし、事業の成長や効率化にもつながります。個人にとってもプライベートの時間が増え、生活の質が向上することへつながりますよね。

  • 氏家さん:まずは仙台に興味を持ってもらうところからのスタートですが、ゆくゆくは世界中の都市の中から仙台を選んでもらえるようにしていきたいです。そして、仙台を選ぶことが多くの人から高く評価されるようなレベルまで価値を上げていきたいですね。

  • 竹川さん:私は東京、横須賀、ニューヨーク、ボストン、カリフォルニア、ロンドンに住んだことがあるのですが、それぞれの都市にそれぞれの文化や時間の流れがあって、それが各都市の産業にも影響を与えていると感じています。仙台の時間の流れは東京などと比べて、少しゆっくりなので、短期的な取り組みやスピード感が求められる産業よりも、BOSAI-TECHのように長期的な視点での研究や事業開発に適していると思います。仙台に合った産業を育てていけると良いですね。

 三人が座談会をしている様子、竹川さんと久本さんが横に並んで座っており、角の席に氏家さんが座っている

『LIFE IS YOUR TIME』をブランドパーパスとして掲げるX-TECHイノベーションプロジェクト。一体どんな活動なのでしょうか?

 
同プロジェクトは、AIやIoTといった先端IT技術とさまざまな産業を掛け合わせることによって、新事業の創出や、先端IT人材の育成・交流を促進する仙台市の事業です。テクノロジーの力でイノベーションを生み出し、仙台・東北で暮らす人々が豊かさを実感できる未来を目指しています。

 SENDAI X-TECH Innovation Project 2023-2024 サイト内のabout記事引用、X-TECHイノベーションを軸に日本一のAI-Ready都市・仙台を目指すの見出しが記載されている

TECHで街の魅力向上を目指す

X-TECH事業では、ビジネス創出のためのワークショップや人材育成のための教育プログラムなど、毎年多くのプログラムが実施されています。
X-TECHと聞くと、IT企業がメインの取り組みに思われがちですが、テクノロジーはビジネスを向上させるために活用するツールにすぎません。実際は多くの非IT企業・団体もX-TECH事業に参加しています。
例えば、仙台の老舗印刷企業など5社が共同で取り組む「仙台まちテックプロジェクト」は、商店街にITを組み合わせてまちの魅力向上を目指しています。

 
【過去記事紹介】SENDAI INC.「UP DATE! SENDAI」
広がる「まち-TECH」。商店街実証実験で見えた仙台市の未来
https://sendai-inc.com/people/update_sendai_vol8/

 「仙台まちテックプロジェクト」のHPのFV、「まち×IT」をキーワードに商店街からの仙台の街の魅力向上を目指す「仙台まちテックプロジェクト」のHP。同事業は仙台市の新成長産業創出促進事業費補助金事業の採択事業として実施されている

 
ITを活用し、仙台中心部商店街全体の人流データを蓄積・分析することによって、商店街を行き交う人々の把握や、商店街に入る個店の売上・利益の改善施策の立案につなげる新しい試みです。

店舗での実証実験【2023年度ダイジェスト動画】

 
「まちテック」プロジェクト以外にも、非IT企業が自社のビジネスにITを活用する事例がたくさん生まれています。
今後、AIなどのテクノロジーが世の中にますます浸透していく中で、どの業界においてもITをいかに使いこなせるかが鍵になりそうです。X-TECH事業は、何から始めて良いかわからない方の参加も歓迎していますので、興味のある方はぜひお気軽に参加してみてください。

 
SENDAI X-TECH Innovation Project 2023-2024
https://lp.techplay.jp/sendaixtech/

 仙台X-TECHのイノベーションアワード会場内で写真展が開かれている様子2024年3月8日に開催された仙台X-TECHイノベーションアワード2024の会場で『LIFE IS YOUR TIME』に関する写真を見ることができた

 
仙台市では他にも防災に関わるBOSAI-TECH、ヘルスケアに関わるHEALTH-TECHなど、さまざまな分野とテクノロジーを掛け合わせて、新しいビジネスの創出を促進しています。『LIFE IS YOUR TIME』というブランドパーパスのもと、今後さらにX-TECH事業が盛り上がっていくのが楽しみです。

PROFILE

株式会社zero to one

株式会社zero to one

zero to oneは「社会とともにイキイキと生き続ける力を引き出す」をミッションに、主にAI、デジタル分野の教育プログラムを産学連携で開発し、オンラインを中心に提供する教育専業のスタートアップです。東京大学大学院 松尾豊教授、東北大学大学院 岡谷貴之教授などの有識者を顧問に迎えたアカデミックな監修付きのコンテンツと、自社開発の教育システムによる独自のクラウド演習を備え、「機械学習」「ディープラーニング」「人工知能基礎」等を提供、これまでにのべ500社以上、約20,000人のAI・デジタル人材育成を行なっています(2023年末時点)。

氏家物産株式会社

氏家物産株式会社

私たちは、ブランドデザインカンパニーです。目指すところへ誘なうビジョナリーやブランドパーパスの策定、言語化し可視化することでその姿を現します。ブランド施策や広告に込めるデザインロジック、さらにはひとつひとつのものづくりにも、ブランドスピリットを吹き込みます。今やこれからを示すときに、どのような佇まいが必要となるか、そのコトバやデザイン要素を炙り出します。状態を整理し、研磨し、姿を現し、社会や生活者のきっかけとなる素敵な物語がはじまりますように。これが私たちの事業です。