08/29THU

LAB

技術で創り出す新しい仙台。
東杜シーテックの挑戦。

仙台市に本社を構える東杜シーテック株式会社。2002年に創業後、順調に成長している企業で、東北大学との連携により培われたその類まれなる技術開発力が話題となっています。そんな魅力たっぷりの東杜シーテック株式会社のプロモーションビデオを、SENDAI INC.がプロデュースしました。

 

今回は、PVで取り上げた東杜シーテック株式会社の2つの技術を深掘りします!

東杜シーテック株式会社の皆様

【CASE 1: スマートエコー】
リアルな声から開発を決意!
日本の漁業を元気にする技術

「スマートエコー」で鱈の雄雌を判別している

さまざまな発明で業界を圧倒する東杜シーテック。そのなかの代表的な製品が、魚の雌雄を判別する「スマートエコー」です。主に鱈をターゲットに開発され、タラコを持つメスか白子を持つオスかを瞬時に判別することができます。

村山結美さん(写真左)と佐々木謙太さん(写真右)。

この技術の開発に関わったのは、テクニカルセクション3の佐々木謙太(ささき・けんた)さんと、村山結美(むらやま・ゆうみ)さん。
佐々木さんは、これまでワイヤレス温度計測システム「TWINDS-T」やエネルギー使用量モニタリングシステム、画像処理/三次元処理関係のPCアプリ開発に携わってきたエンジニア。

村山さんは、ILC(国際リニアコライダー)の加速器内面に発生する欠陥を自動認識する、AI技術を用いた欠陥検査システムの開発や車載カメラによる障害物検知システム開発に関わってきた最先端技術のエンジニアです。

開発のきっかけは、東日本大震災。

佐々木謙太さん

  • SENDAI INC.:開発のプロのお二人ですが、魚のことはまったくの門外漢だとか。そんなお二人が、魚の雌雄を判別するツールの開発を担当するようになったきっかけはなんですか?

  • 佐々木さん:きっかけは、東日本大震災でした。大きな被害を受けた三陸で、なにか私たちの技術でお役にたてることがないか、東北大学IISセンターと一緒に調査したんです。


    当時漁業は成り手不足であるうえに、とくに魚の雌雄を判別する役目は熟練の目利きの方が担っていました。それがもし、機械でできたら……という声を聞いたのがはじまりでした。

 

スマートエコーで鱈の性別を判別している様子

  • 村山さん:まだまだ熟練者に依存している世界なので、技術の力で新しい人の参入のハードルを下げられたら。海で雇用が生まれて、海が生活基盤になるお手伝いができたらうれしいんです。

【CASE 2:ハンドパスポート】
震災で緩和した特許使用がきっかけに。
生体認証システムから
生まれるスマートな未来

ハンドパスポートに手を翳している

東杜シーテックが誇る、もう一つの最新技術がこちらの「ハンドパスポート」。 紹介してくれたのは、開発者の一人であるテクニカルセクション3の谷口広明(たにぐち・ひろあき)さんです。

谷口広明さん

  • SENDAI INC.:スマートエコー同様、こちらも開発のきっかけは東日本大震災だったとお伺いしたのですが……。

  • 谷口さん:はい。アズビル株式会社と東北大学が、2011年3月の東日本大震災における東北の復興をさらに加速させるための支援として、照合アルゴリズムの利用制限を緩和したことがきっかけです。

    それで、弊社がソフトウェアを、匠ソリューションズ株式会社さんがハードウェアを担当し、共同開発で生まれたのがこの「ハンドパスポート」です。

 

ハンドパスポート

「ハンドパスポート」は、東北大学青木孝文研究室の位相限定相関法がコアになった生体認証システム。高速で撮影された画像から手のひらを自動的に検出し、極めて高い精度で認証するので、今後の広がりが期待されている製品の一つなんです。

ひとりひとりが
ワクワクするものを作る。
東杜シーテックの強み

谷口広明さん

このほかに「スマートエコー BX」の開発にも携わっている谷口さんですが、6年前までは某大手カメラメーカーに所属していたそう。当時はデジタルカメラの開発、その中でも主に、製品内で動く組み込みソフトでセンサー制御や画面表示を担当していました。

  • 谷口さん:以前は、社内での自分の役割は決まっていたんですよ。でも、ここではやれることの幅が大きい。
    まだまだ分からないことだらけですが、ひとつの課題をクリアしていくのが楽しいんです。

エンジニアひとりひとりが楽しみながら開発にあたる。これこそが、東杜シーテックの強みなのでしょう。

【CASE 1: スマートエコー】
かけた期間はなんと5年!
挑戦の連続だった、
専門外の魚の判別装置の開発

村山結美さん

魚の腹部に当てた超音波ブローブを用いてソフトウェアでオスメスの自動判別を行う「スマートエコー」。判別結果は音声と操作画面で確認でき、誰でも簡単に操作することができるそうですが、開発は挑戦の連続だったそう。

  • 村山さん:専門外の魚用のツールの開発は、かなりチャレンジングではありました。
    まず、鱈を傷つけずにお腹の中を見るには何を使えばいいのだろう?と、核となる技術の研究からスタート。

    X線の技術、赤外線の技術を使ってみてもうまくいかず、超音波でトライしたのが現在のスマートエコーなんです。

  • SENDAI INC.:試行錯誤を繰り返し、現在の機種が完成したのですね。特に大変だったのは、どのあたりですか?

  • 佐々木さん:AIによる自動判別を導入するにあたり、一番時間がかかったのがデータ収集でした。
    スマートエコーSXシリーズの初期機種ができたのは2016年なのですが、開発に5年くらいの期間がかかっています。

 

現在は鱈と鮭での実用化を目指し、間もなくデビューを迎える「スマートエコー」。今後は精度をさらに向上させ、対応魚種を増やしていくことを目標に開発チームの研究は続いていくそうです。

【CASE 2:ハンドパスポート】
キーレス時代の新常識?
すでに引く手数多の
HAND PASSPORT

谷口広明さん

これまでの生体認証でも指紋認証などはありましたが、この「ハンドパスポート」が優れている点は、触れずに済むということ。 スポーツジムや銭湯など、不特定多数の人が利用する衛生面が気になる施設のほか、マンションの出入り口やスマートドアなどでも利用できます。
「もうすでにいろいろなところからお声がけをいただいています」と谷口さんが話すように、これからのキーレス時代の新常識になるかもしれません。

GREEiN画面が映るスマートフォンゴルフがきっと上手くなる? 「GREEiN」

東杜シーテックはそのほかにも、ゴルフ場のグリーンをスマホで撮影して芝目を読み込む、株式会社テクノクラフトの画像処理アプリ「GREEiN」に、高度な画像処理技術を提供しています。また、アームロボットの研究開発にも力を入れているとのこと。これからもさまざまな分野で、私たちをワクワクさせてくれそうです。

上部に取り付けられたカメラがリンゴを認識してピックアップしている上部に取り付けられたカメラがリンゴを認識してピックアップします。

仙台から、世界を変える技術を次々と開発していく東杜シーテック。その技術開発の根底にあるものは、「人に寄せる優しさ」。
「スマートエコー」が漁業の成り手不足、人手不足を解決するためのものであったり、「ハンドパスポート」が入退室の煩わしさを解消してくれるものであったり……。
これからも東杜シーテックのエンジニアのみなさんは、「人に寄せる優しさ」をフックとした技術で、たくさんの人たち、さまざまな業界が抱える課題の解決に挑んでいってくれることでしょう。

PROFILE

東杜シーテック株式会社

TOHOKUでのモノ作りにこだわり、幅広い分野のソフトウェア開発を手掛ける。創業以来、カーナビ・カーオーディオ等の「組み込み系システム」や半導体製造装置等の「制御系システム」開発を主軸とし、技術力を高めてきた。 近年では、人工知能(AI)と長年取り組んできた画像処理を組み合わせた自社製品の開発にも力を入れている。 「社会のまんなかでシステム開発」を合言葉に、これからも世の中で本当に必要とされるシステム・製品を提供し続ける。

 東杜シーテック株式会社

Photo:小林啓樹(OPEN TOWN)
Words:岡沼美樹恵