05/29FRI

LAB

自分らしく働ける
社会を目指す
manabyのEdTech

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働きたいけれど、さまざまな理由で働くことが困難な人たちをサポートする「就労移行支援」。事業所へ通って訓練を受けるのが一般的でしたが、manabyの就労移行支援では在宅訓練が可能です。

「自分らしく働きたい」方々を応援するmanabyのサービスとはどのようなものか、また教育とテクノロジーを組み合わせたEdTech(エドテック)についてどう考えるか。新しい形の教育・学習の可能性についてお話を伺いました。

<お話を伺った方>
清水未希(しみず・みき)さん/株式会社manaby システム開発チーム ディレクター
桃生篤(ものう・あつし)さん/株式会社manaby 仙台駅前事業所管理者・コンテンツ制作
長澤弘輝(ながさわ・ひろき)さん/株式会社manaby 川崎事業所支援員・システム開発

manabyでは、eラーニングを使った在宅訓練が可能

陽陽の光が差し込む、明るく開放感のあるmanabyオフィス

  • SENDAI INC.:manabyで行っている、就労移行支援事業について簡単にお教えください。

  • 桃生さん:就労移行支援事業所では、障害を持つ人が仕事に就くためのサポートをしています。画一的な集団訓練を行う事業所が多いですが、manabyではITスキルを中心に学びながら、利用されている人が自分らしい働き方を見つける支援を提供しています。

  • SENDAI INC.:利用者の方はどのように勉強しているのでしょうか?

  • 桃生さん:自社で開発しているeラーニングシステムを利用し、通所でも在宅でも同じ学習サービスが受けられるようになっています。

    従来は、利用者さんが直接事業所に足を運んで訓練し、就職を目指すというのが一般的でした。しかしそれだと、身体的な障害があって外出が難しい人や、人混みが苦手で公共交通機関を利用すると体調を崩してしまうような人にとって大きな負担となります。

    manabyでは在宅での訓練が可能ですから、外出が難しい人でも学習が継続しやすく、そのまま在宅就労に結びつくケースも多いんですよ。

  • SENDAI INC.:eラーニングを利用して在宅で訓練するって、どんな方法で行っているんですか?

  • 桃生さん:ウェブサイト上にアップロードした動画を見ながら学習を進めることができます。YouTubeのようなものをイメージしてもらえるとわかりやすいと思いますね。利用者さんには専用のIDをお渡しするので、それでmanabyのeラーニングのサイトにログインして学習してもらいます。

  • 清水さん:取得できるスキル別に、オフィス系やデザイン系、プログラミング系などさまざまな動画があります。支援員と一緒に、その方が何を目指してどのように学習を進めるのか事前に計画を立てて、相談をしながら学習を進めます。

  • 桃生さん:パソコンの基本操作などもわかりやすく説明しています。覚えの早い人はどんどん進めるし、ゆっくりの人は1日1本ずつというように、一人ひとりに合ったペースで学習できるのが特徴です。

manabyのマスコットキャラ、マナビーくん

  • SENDAI INC.:他にはどんなシステムを取り入れていますか?

  • 桃生さん:「ダイアローグ(対話)」を重視しています。コミュニケーションに対する姿勢のようなもので、利用者さんとスタッフ、スタッフ同士、利用者さん同士がお互いを尊重し、理解し合うことを目的としています。

  • SENDAI INC.:特別にダイアローグのための時間を設けるのでしょうか。

  • 桃生さん:社員は定期的にダイアローグ研修を受けています。日々の業務中にもスタッフ間で15分から30分くらいの時間を設けることもあります。利用者とは、週に1度は面談のために通所してもらっているので、そのときに対話の時間を取ったりしています。

リモートワーク促進が企業の生産性を向上させる鍵となる

  • SENDAI INC.:「在宅で働きたい」というニーズは、障害のある人に限らないと思います。今後、ITを活用した多様な働き方がもっと広がっていくのではないでしょうか。

  • 桃生さん:ちょうど今、新型コロナウイルス感染症の影響で、リモートワークを導入する企業が増えていますよね。リモートワークが促進されることで、今まで気づいていなかったけれど実は無駄だった業務などが可視化され、削ぎ落とされて、結果的に企業の生産性が向上すると考えています。

    今はまだ、在宅で働きたいという障害者の人たちの要望に、求人数が追いついていない状況です。でも、今後リモートワークを導入する企業が増えれば、この状況も変わってくると思います。

  • SENDAI INC.:Education(教育)とTechnology(テクノロジー)を合わせたEdTech(エドテック)は、世界的に注目されている分野です。まさにmanabyの取り組みそのものと言えそうですが、こうした考え方や取り組みは今後どうなっていくとお考えですか。

  • 清水さん:家に引きこもりがちだった人が在宅で学べるようになると、本人の自信につながり、外に出るきっかけになります。そういう意味で、非常に画期的で社会的に意味のあるものだと思いますね。

    また障害があって外出できない人の可能性を広げることで、企業の戦力になれますから、人手不足の解消にも役立つはずです。

    外出自粛の状況であっても、オンラインなら学びを止めずに継続して訓練することができます。柔軟な学びで育った人は、柔軟な考え方や対応ができるはず。そういうメリットもあると感じています。

manabyのeラーニングシステム

利用者のニーズに合わせたシステム開発が可能に

  • SENDAI INC.:eラーニングシステムを自社で開発されていると伺いましたが、最初から社内でシステムを?

  • 清水さん:2016年にmanabyを設立した当初は社員も数名で、まだシステム部がなかったんです。

    eラーニングの開発は社員が企画ディレクションを行いますが制作は外部パートナーに多くの部分を依頼していました。

    社内メンバーが増えてから、言語をPHPからRubyに変更したり、レンタルサーバーからクラウドサーバーに切り替えたりなど、システム面を一新しました。

  • SENDAI INC.:使う人にとって変化はありましたか?

  • 清水さん:機能面では、動画のスピードを変更できる機能を追加しました。倍速にしたり、逆にゆっくりにしたり。これは、以前から利用者さんからの要望が多かったのです。

  • 清水さん:他に要望が多いのは字幕ですね。今は聴覚障害のある人向けに、文字起こしをしてから学習してもらっているので、これについては現在進行形で対応を進めているところです。

  • SENDAI INC.:その場合、自動生成のシステムを入れて解決する、ということでしょうか?

  • 清水さん:自動生成だけでは字幕のクオリティが下がるので、人の手を介して補正する必要があると考えています。

  • SENDAI INC.:いろいろな手法を組み合わせて最適なものを作るのですね。今後、教育の分野において必要な技術やコンテンツはどんなものだと思いますか?

  • 清水さん:一人ひとりが自分らしく学べる、多様性に対応できる学びを提供していきたいです。最新の技術動向や企業が求めるスキル、状況などがめまぐるしく変化する時代ですので、随時情報をキャッチして社内開発に活かしていきたいと考えています。

  • 桃生さん:今のeラーニング動画は主に利用者さん向けですが、今後は社内教育にも応用していくつもりです。例えば研修の様子やダイアローグのやり方などを動画にして、それを社内で共有すると。一つのコンテンツを多方面で活用しやすいことも、IT技術やオンラインの強みかなと思います。

VR技術を活用した「職場体験」を

利用者による個性豊かな作品がディスプレイされている

  • SENDAI INC.:eラーニング以外で、今考えている新しい「学びのスタイル」みたいなものはありますか?

  • 桃生さん:実は今、職場体験ができるVRの制作を進めています。VRゴーグルを装着すると、実際にオフィスにいるような感覚になれるものです。

    外出が難しかったり、新しい場所に行くのが苦手だったりという人が多いので、そういう人たちのハードルを下げるために制作を進めています。

距離があっても一緒に働いているような連帯感を持てる

  • SENDAI INC.:manabyのエンジニアの働き方、働く環境について教えてください。

オンラインで取材にご協力いただいた長澤さん

  • 長澤さん:開発をするエンジニアでありながら、同時に支援員としても働いている点が大きな特徴です。支援を受ける人と間近で接し、どんなふうにシステムを使っているのかを見られるので、強い当事者意識を持って開発に携わることができます。

  • SENDAI INC.:manabyには東北と関東合わせて20箇所の事業所があると聞きましたが、エンジニアはどこで働いているんですか?

  • 長澤さん:各事業所に点在しています。物理的距離がある状態で開発をするので、エンジニアにとっては特殊かもしれません。やり取りは主にSlackを使って、テキストによるコミュニケーションを取っています。

  • SENDAI INC.:テキストコミュニケーションによる難しさは感じないですか?

  • 清水さん:直接話せばニュアンスで伝わることも、文章では伝わりにくいことはよくあります。会話なら1往復で終わることが、文章になると2、3往復必要になったりとか。対面とは違った工夫が必要だなと感じることは多いですね。

  • 長澤さん:物理的距離による問題を解消するためにいろいろな工夫をしていて、その一つがSlackのTwitter化です。
    1人1つ「ひとりごと」用のチャンネルを作って、今自分がしていることや困っていることをつぶやくんです。

    そうすると見てくれた誰かが返信をくれたり、スタンプを押してくれたりする。小さくてなにげないコミュニケーションですが、一緒に働いているような連帯感を持てて、すごく良いなって思っています。

  • SENDAI INC.:Slackをそういうふうに使うのは、おもしろいですね!

  • 長澤さん:他にも、定期的にオンラインでビデオ通話をしたり、数ヶ月ごとにオフラインで会ったりと、顔を合わせての対話も大切にしています。

  • 清水さん:今年は年始に東京で、エンジニアだけの勉強会を開催しました。いつもは離れた場所で働くみんなが同じ場所に集まって、技術の話や仕事の話を1日していましたね。

    そういった機会があるからこそ、テキストではちょっと伝わりにくい話でも、うまくコミュニケーションが取れているなと感じます。これからも大事にしていきたいですね。


取材日:3/24

PROFILE

株式会社manaby

manabyは、障害をお持ちの方が仕事につくまでの道のりをサポートする「就労移行支援」を始めとした就労支援事業を行っています。ITスキルを自分のペースで学べるeラーニングを独自開発し「一人ひとりが自分らしく働ける社会」の実現を目指して活動しています。

manaby仙台駅前事業所

Photo:蝦名恵一
Words:岩崎尚美