05/14THU

MEET UP

仙台に拠点を持つ
IT業界のプロによる
学生向けトークセッション開催

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「IT業界を志してはいるけれど、どこの何を目指せばいいのか、いまいちピンと来ない……」。SENDAI INC. 編集部が取材を続けていると、そんな学生さんたちの声が聞こえてくることがあります。

たしかに、一口に「IT」と言ってもその範囲は広く、どの業界と組み合わせるかによっても可能性は無限大。
日々進化し続けている業界だからこそ、各分野がどのようにITを取り入れかけ算「X-TECH(クロステック)」を実践しているのかを見ることが、進むべき道を見つける手助けになるかもしれません。

今回のSENDAI SIDEでは、ITを組み合わせることで新事業を生み出した仙台市のIT企業を招いたトークセッション「仙台からX-TECHイノベーションを起こすIT人材のキャリアデザイン」をレポートします。

IT SIDEでは、ライブ配信を同時に行った同イベントの裏側にフォーカスし、動画配信の今後の可能性について、テクノロジーの面からお話を伺いました。

◆登壇者(左から)

・モデレーター

楽天株式会社
ECビジネスエンパワーメント課 シニアマネージャー 南條 融 氏

・パネリスト

株式会社ラナエクストラクティブ
アートディレクター/執行役員 秋山 洋 氏

株式会社Showcase Gig
東北オフィス 所長 加藤 大典 氏

東杜シーテック株式会社
Fish & Robo Base プロダクトマネージャー 藤田 知之 氏

株式会社コー・ワークス
代表取締役社長 淡路 義和 氏

X-TECHがどう社会を変化させるのか

  • 南條さん:今回は集まってもらったのは、様々な形で事業とITを掛け合わせた独自のサービスを持つみなさんです。
    どのようなサービスを開発されたのか伺っていきたいと思います。

  • 藤田さん:「Fish & Robo Base」は、2019年に立ち上げた漁業関係の装置やロボット関係のシステム開発を行う拠点です。
    事業に着手したきっかけは東日本大震災。沿岸部で少子高齢化問題に拍車がかかったことを受け、ITを導入することで課題解決を、とスタートしました。

  • 南條さん:漁業とITのコラボですね。具体的にどのようなことを?

  • 藤田さん:超音波エコー画像を用いて、誰でも簡単に魚の雌雄を判別できる「Smart Echo(スマートエコー)」を開発しました。
    これまでは熟練の経験と勘が不可欠でしたが、この装置を使うことで課題を解消し、さらに新しい価値を生み出せるようになりました。

  • 淡路さん:コー・ワークスでは、地方創生 x ITを事業として立ち上げていますが、そのコンセプトは「最終的に地域の人だけで自走できる環境を作ること」です。

    我々の役割は、地域に足りないITを、その地域にできる限り残るよう伝えることと考えています。

    東北は少子高齢化の最先端地域などと言われています。人口が減るのはもはや止めようがないけれど、結果不幸になる社会を自分の子どもに渡したくない。

    そのためには人が減っても売上が下がらない企業を増やすべき、というビジョンを掲げ、新たに株式会社IoT.Runというスタートアップ企業を立ち上げ「Tibbo-Pi(ティーボパイ)」という誰でも簡単にIoTの開発ができるデバイスを開発しました。

  • 加藤さん:「おもてなしの質をテクノロジーで向上させる」ことを中心に取り組むShowcase Gigでは、モバイルオーダープラットフォーム「O:der(オーダー)」を提供しており、来店後に自席のQRコードからお客様自身のスマホで注文できるテーブルオーダサービス「SelfU(セルフ)」やセルフ注文端末「O:der Kiosk(オーダー・キオスク)」などを開発しています。

    注文・会計といったお店の業務が軽減されるだけではなく、客単価アップの効果も見込めるんです。
    また店員に余裕が生まれることによって、接客やサービスが向上するなど、自然とおもてなしの質も上がるといった声を導入店舗様から頂いています。

  • 南條さん:なるほど。AIという言葉が広まり、「仕事がなくなるのでは」なんて言われることもありますが、なくなるのではなく人間が使える時間が増え、新しいことができるようになるんですよね。

  • 秋山さん:インターネットを通じたプロモーションなどを行うラナエクストラクティブ では、地域をテクノロジーやデザインとつなげるX-TECHを実践しています。

    丸森町では移住起業家をサポートする「まるまるまるもりプロジェクト」を立ち上げ、すぐに定員いっぱいになる、良い結果を出すことができました。

場所が関係のない時代、採用の基準にも変化が。
仙台で描くITのキャリアデザイン

それぞれの得意分野にITを掛け合わせることで、より強みを生かしたサービスを展開する4社。
話題は、ITを使ったこれからの仙台でのキャリアデザインに移ります。

  • 加藤さん:今はリモートワークする会社も増えていますし、場所の制限はどんどんなくなっていくでしょう。
    人口減少が課題の地方は少なくないですが、それってある意味、首都圏よりも先行しているとも言えます。問題に早く取り組んできた成果は、これから地方の強みになっていくと思います。

  • 南條さん:場所に縛られずに仕事ができるようになり、ライフデザインに重きを置ける世の中になってきた気がしますね。

  • 加藤さん:そうですね。地方にいることが強みになっていくと考えています。
    東北オフィスでは、地元に戻りたいけど仕事がないから仕方なく首都圏にいる、という人の受け皿になっていきたいです。

  • 藤田さん:テック的な観点から言うと、プログラミングって経験を積めば誰でもできますし、ITの垣根が低くなってきている、という実感があります。

    弊社の採用基準も変わってきていて、最近は即戦力にならなくても、どこか一点尖った技術を持っていたり、研究をしていたりという人を採用するようになってきましたね。
    我々ソフトウェア業界の人間が気づけないような、新しい観点が生まれるんです。

  • 淡路さん:今はITって強い武器だけど、デジタルトランスフォーメーションが進んだ10年後には当たり前になっている可能性もあります。

    そのような動きの早い世の中でも、思いを実現するために柔軟に新しいことにも挑戦できる「強い思いを持つ人材」が活躍する場所が、ここ東北には少ないと感じており、そんな人材の受け皿になる組織を作りたいと思っています。

    最終的には、その強い思いを持つ人たちが、思いを形にするお手伝いをしたいです。

学生さんの「気になる!」を聞いてみよう

――今後、イノベーションが起こりそうな業界はありますか?

  • 藤田さん:漁業に限らず、一次産業はまだいけると思います。正直ITが入り込むハードルは高いですが、だからこそ余地があるとも。

  • 加藤さん:テクノロジー同士がもっとつながっていくのでは。例えば漁業と飲食の距離が近くなると、あそこでチェックした魚が今この料理になっています、みたいなことができるようになりますよね。

――学生時代にやっておいた方がいいことは?

  • 加藤さん:自分が何者かをちゃんと知ることですね。
    自己分析をして突き詰めたからこそ、今の仕事につながっていると思います。
    大学4年生になっても自分が何をやりたいかわからなくて、適当に仕事を選ぶことほど不幸なことはありませんから。

  • 淡路さん:私も加藤さんの意見に同感です。

    もっと言うと20代は自分を知る時間だし、若いからという理由で失敗しても許されることが多いから、いろいろなことにチャレンジし、経験して、自分の限界を知った方がいいとウチの社員にも伝えています。

    実務じゃないと自分の得意不得意が見えてこないということも多々ありますから。

  • 南條さん:好きなことをやればいいと思いますよ。
    意志を持って何かに取り組む、パッションのある人は高評価につながりますし、成長の見込みがあるなと感じます。

実はこのトークセッションは、業界説明会として開催される予定だった「SENDAI IT CAREER DAY 2020」の中の1コンテンツでした。
リアルイベントとしての開催予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえ、急遽トークセッションのみライブ配信で行うことに。

IT SIDEでは、ライブ配信を担当したNPO法人メディアージの漆田義孝さんに、トークセッションの裏側について伺います。

時間も距離も関係なく参加できる。ライブ配信の可能性。

――東日本大震災後の2012年から、被災地の情報などをライブ配信し続けてきた漆田さんにとって、ライブ配信の意義とは何でしょうか。

  • 漆田さん:時間や距離に関係なく参加できる、視聴できるのが一番のメリットだと思います。

    最近ではスマホを使えば誰でも簡単にライブ配信ができるようになり、配信者のハードルが下がってきています。
    今後はもっと、当たり前になっていくと思いますよ。

――今回はYouTubeライブを使用しましたが、ライブ配信ができるプラットフォームは他にもあります。選び方のポイントは?

  • 漆田さん:YouTubeライブの他、ニコニコ生放送、LINE LIVE、SHOWROOMあたりがメジャーどころで、TwitterやFacebook、Instagramでもライブ配信ができます。

    YouTubeライブは、ログインしなくても誰でも見られるのが大きな利点です。
    ただスマホでやるなら、登録者数の制限がないTwitterやFacebook、Instagramを使うのが手軽でしょうね。

    最近はZoomの注目度も高まっています。
    YouTubeは登壇者だけが画面に映り続ける、テレビに近い一方通行型ですよね。
    しかしZoomの場合、画面を切り替えれば視聴者が画面に映るので、直接会話したり質問したりできます。

    リアルイベントではよく質問者のところへマイクを持っていって質疑応答したりしますが、あれに近いことが、Zoomを利用すればできるようになります。

    あとは、eスポーツなどサブカル系のイベントならニコ生、アイドルならSHOWROOMなど、ユーザーとの親和性が高いプラットフォームを選ぶと良いと思います。

ライブ配信初心者が知っておきたい“あれこれ”を聞く!

――漆田さんはパソコンを使って配信されていましたが、他にもたくさんの機材を使っていて、初心者には難しそうな印象を受けました。

  • 漆田さん:今回はカメラを2台と、「スイッチャー」という機材を使っています。
    あとは会場に備え付けの音響機材とマイクですね。

    カメラが1台だと視聴者が飽きてしまうので2台か3台用意するのがベストなのですが、どちらの映像を使うのかを選ばないといけませんよね。
    その処理をしてくれるのがスイッチャーです。

    ただパソコンには本来カメラや、音響の音声などを直接取り込む端子がついていないので、今回のような機材を使ったライブ配信を実現するためには、「USBでパソコンと接続できるタイプの特殊なスイッチャー」が必要です。

――ライブ配信のための機材を揃えるとしたら、どれくらいの予算を見ておけばいいでしょうか。

  • 漆田さん:最低限の費用で考えるなら、カメラ1台やマイク1本だけをつないでパソコンと接続するような、いわゆる「キャプチャー」と呼ばれる機械は2~3万円くらいで買えます。
    駆け出しのYoutuberもこういった機材を使っていますね。

    もう少し上の価格帯だと、スイッチャー機能を備えた機材もあります。
    業務で使うなら20~30万円くらいのスイッチャーを購入するのがよいと思います。

    あとは動画の撮れるカメラですね。
    これは家庭用のビデオカメラでも構いません。
    あとはマイクとか……どこでどんな映像を撮りたいかにもよって変わってきます。

――スマホなら1台でOKなんですか?

  • 漆田さん:性能にもよりますが、スマホには動画撮影にも適したカメラや比較的高性能なマイクがついているので、ズームもできるしある程度遠いところの音も拾えます。FacebookやTwitterでライブ配信するなら、スマホ一台でも良いでしょうね。

――ライブ配信時の注意点は?

  • 漆田さん:安定した通信環境を確保することです。
    以前、会場にネット環境がなかったのでモバイルルーターを1台だけ用意してやろうとしたら、電波が届かない!というトラブルがあって、肝を冷やしたことがありました。

――音を綺麗に撮るためのコツは?

  • 漆田さん:細かい技術はいろいろありますが、一番はなるべく話者に近いところにマイクを設置して、声を拾えるようにすることですね。

    視聴側からすると、音が聞き取りにくいとかノイズが多いとストレスが大きくなるんですね。
    最悪、映像はカクカクでも、音だけは綺麗に聞こえる環境を確保するのが大事です。

――これからライブ配信をやってみたい初心者の方へ、アドバイスをお願いします!

  • 漆田さん:どんな目的で、どれくらいの人に、どういう環境で見てもらいたいかを事前に想定しておくのが大切です。あと忘れないでほしいのが、最初の視聴者数だけを見て落胆しないこと。

    今日の動画は200人くらいの人が見てくれましたが、有名YouTuberの動画視聴数は何万人。
    比べるとがっかりしそうになりますが、リアルタイムで200人もの人が見ているってすごいことじゃないですか。
    これがライブ配信の醍醐味と言えるかもしれませんね。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、急遽無観客でのライブ配信という形にシフトした本イベント。
ITを駆使することで、場所も時間もとらわれない、新しい形が次々と生まれてきています。熱い情熱を持った学生のみなさん、ぜひ、その柔軟な発想を武器に、気になる会社のドアを叩いてみてくださいね。


Photo:蝦名恵一
Words:岩崎尚美

PROFILE

加藤 大典(かとう・だいすけ)

株式会社 Showcase Gig

「日常の消費に溶け込むテクノロジーにより生活を向上させること」をミッションに掲げ、2013年より国内初の飲食・小売業界向けモバイルオーダーサービスを開発しています。スマホの普及と人手不足やキャッシュレス浸透の波を受けてニーズが急激に高まっており、OMO領域のリーディングカンパニーとして取り組み続けています。

南 條融(なんじょう・とおる)

株式会社楽天

楽天は、日本発のインターネット・サービス企業で、Eコマースをはじめ、フィンテック、デジタルコンテンツ、通信など、多岐にわたる分野で70以上のサービスを提供しています。 これら様々なサービスを、楽天会員を中心としたメンバーシップを軸に有機的に結び付け、他にはない独自の「楽天エコシステム」を形成しています。1997年に創業し、「イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする」という企業理念のもと、現在では1万7千人以上の従業員を擁し、世界30カ国・地域において事業を展開するグループ企業となっています。

淡路 義和 (あわじ・よしかず)

株式会社 コー・ワークス

株式会社コー・ワークスは、2009年創業のモノ・コトづくり企業です。弊社のミッションは、ひとや企業、そして地域さえも、それぞれの “得意” と “不得意” を補完しあって、誰もが自分らしく楽しく生きられる社会、「誰かの得意なことで、誰かの不得意を補い合える」そんな世界を目指すこと。これが”個性を活かす“ や ”自立する“ということなんだと思っています。結果集まった個性的なメンバー同士で相乗効果を生み出し、0から1を実現するような組織をここ東北に作りたいと考えています。

漆田 義孝(うるしだ・よしたか)

NPO法人メディアージ

東日本大震災直後の2011年4月から、ライブ動画配信サービスを活用した被災地の情報発信を開始、仙台在住の大学生が中心の番組「IF I AM」の活動や、震災関連イベントのライブ中継に取り組む。 2012年8月に法人化。その後東北発ローカルメディアとして活動を継続していくため、「10年後のメディアをつくる」をテーマに、政治・地元ミュージシャンなど既存メディアであまり取り扱われない分野の情報発信に取り組むほか、対話の場づくり、まちづくりの担い手育成等の事業にも取り組んでいる。

秋山 洋(あきやま・ひろし)

株式会社ラナエクストラクティブ

2007年に設立した、デジタル発想を強みにしたコミュニケーションデザインカンパニー。デザイン、テクノロジー、PR、学術分野など様々な視点を持ったプロが在籍し、映像や音楽、店頭ツール、パッケージ、ワークショップ設計、イベント連携など、幅広く体験を創造。 ACC、文化庁メディア芸術祭、グッドデザイン賞、ONE SHOW、CODE AWARDなど幅広い分野で受賞多数。RANA UNITEDグループの一員。

藤田 知之( ふじた・ともゆき)

東杜シーテック株式会社

TOHOKUでのモノ作りにこだわり、幅広い分野のソフトウェア開発を手掛ける。創業以来、カーナビ・カーオーディオ等の「組み込み系システム」や半導体製造装置等の「制御系システム」開発を主軸とし、技術力を高めてきた。 近年では、人工知能(AI)と長年取り組んできた画像処理を組み合わせた自社製品の開発にも力を入れている。 「社会のまんなかでシステム開発」を合言葉に、これからも世の中で本当に必要とされるシステム・製品を提供し続ける。