11/22WED
PEOPLE
仙台から日本・世界を見据える
SRA東北の挑戦
AIを活用した商品やサービスが広く普及している昨今。そんな中、仙台で40年近くIT事業に取り組んでいる株式会社SRA東北は、複数のAIサービスをサブスクリプションで利用できる「俺たちのAI」を提供しています。先進的なAIサービスは、仙台のAI市場にどんな影響を与えているのか。このサービスによって企業はどんな課題を解決できたのか。そして、仙台から発信する狙いとは。株式会社SRA東北のビジネス・ディベロップメント チーフ・ディレクターである我妻裕太さんにお話を伺いました。
ITの未来を見据えた取り組みを続けて37年
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SENDAI INC.:SRA東北では創業当初から様々な業界のオーダーメイドのシステム開発や自社パッケージ開発を、2019年に東北電力と共同で送電鉄塔の腐食診断システムを開発されています。さらに、複数のAIソリューションをひとつのパッケージとして使用できるサービス「俺たちのAI」を発表しました。まずはこのインパクトの強いネーミングについて伺いたいです。
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我妻さん:当時、世の中はまだAIに対しての理解が進んでおらず、どこか懐疑的な雰囲気がありました。だからもっとAIを身近に感じられるような名前にしたい、そしてちょっとふざけたいという思いがあったんです(笑)。まずは、興味を持ってもらえるネーミングが大事だと考えました。
チャットボット、マニュアル検索、画像AI、AIメール監視など、さまざまなAIソリューションを一つのパッケージとして使うことができるサービス。
複数のAIサービスを定額で利用でき、サービスの運用費用を抑えることが可能。画像AIで判定した結果をチャットボットで出力するなど、柔軟なカスタマイズや連携ができる点も魅力。
広い業種でAIが求められる時代に
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SENDAI INC.:現在まで「俺たちのAI」の反響はいかがですか?また企業でどんな使われ方をしているのでしょうか?
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我妻さん:やはり名前についての反応も多かったですが、内容についても「なかなかおもしろいね」という声をいただきました。今でこそAIのサブスクリプションは他にもありますが、その当時は早いくらいでしたから。そして今では「俺たちのAI」に含まれる各機能がお客様のニーズに合わせてどんどん進化し、発展しています。また、様々なAIのシステム開発に関するノウハウを蓄積しています。AIのシステム開発の事例としては、東北電力ネットワークの「腐食劣化度診断システム」がそのひとつです。これは送電鉄塔に発生したサビの劣化をAIで診断するシステムなのですが、サビの程度を見極めるには検査をする人それぞれに感覚が異なるそうです。ベテラン社員から見れば錆びていないと感じても、不慣れな新人社員の目には錆びているように見える。そうなると必要のない場所にまで防腐剤を塗布することになり、結果として塗料代が高額になってしまう。この問題を解決するために、東北電力ネットワークと共同でAIを開発しました。このシステムは経済産業大臣賞を受賞しています。
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SENDAI INC.:素晴らしい功績ですね。その他にもSRA東北で開発したAIサービスの活用例はありますか?
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我妻さん:最近では経営者が築いた仕事の原理や教訓、上層部の思いを伝承する「社長AI」を採用していただいた企業があります。これはAIチャットボット形式で質問を入力するだけで企業のトップの思考を得られる仕組みなのですが、現在実証実験が進んでいるところです。また歯科医の診療に行くべきか悩んでいる人に対して、AIでの会話を通じて診察する時期を判断するサービスも実験中です。企業だけでなく、一般の人にも使用していただける段階まで来ているのかなと思います。
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SENDAI INC.:「俺たちのAI」に限らず、SRA東北が提供しているサービスを利用している企業の中で、我妻さんが「意外だな」「おもしろいな」と感じた活用事例はありますか?
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我妻さん:AI For Skyという宇宙とAIをテーマにしたビジネスも展開しています。AI For Skyは衛星写真、航空写真の中から検出したいものをAIが人間の目に代わって見つけてくれるサービスです。代表的なものですとソーラーパネルを見つけるような事例もでてきており、大都市圏の調査をAIが代替えしてくれています。今後は宇宙をさらに意識したビジネスも展開していきたいと思っています。
「俺たちのAI」は、あなたたちのもの
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SENDAI INC.:SRA東北は創立当初からオープンソースの価値を見出すなど未来を見据えた取り組みを重ねてきたかと思います。「俺たちのAI」の開発でも新たな取り組みをどんどん広げていきたいという思いがあったのでしょうか?
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我妻さん:もちろんその思いはありましたね。AIを広めたいと考えた時に、世の中の人たちにまずは「AIって自分たちのものだよね」という感覚を持ってほしくて、それで商品名に“俺たちの”と付けたくらいですから。
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SENDAI INC.:サービスを使う人たちを指した “俺たち” なのですね。
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我妻さん:そうです。使う人たちの目線で「俺たちのものだよね」と思ってほしいと思っています。それくらい親しんでほしいという意味なのです。
仙台がITに強い街になるために
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SENDAI INC.:仙台に40年近く会社を構えて、仙台におけるITへのニーズの変化や、AIについての認識をどのように感じていますか。
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我妻さん:少しゆっくりな印象です。東京や海外の現状から見ると、2、3年遅れているのではないでしょうか。
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SENDAI INC.:その2、3年の差はだいぶ大きいですか?
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我妻さん:そうですね。アメリカや東京でいろいろな試みがスタートしていても、仙台の人たちはまだ「よくわからない」という感じでしたから。でもここ数年、宮城県や仙台市IT企業やIT産業の活性化に積極的に力を入れているのを感じます。企業だけでなく自治体が一緒に盛り上げてくれるのはとても心強いですよね。
地域でつながり、地域を潤す
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SENDAI INC.:仙台でITに関わる仕事をすることの良さや利点にはどんなことがあるでしょうか。
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我妻さん:仙台には素晴らしい実績を残している大学や日本を代表する会社が多くありますよね。私たちも地元大学や東北電力と連携しましたが、積極的に新しいことに取り組んでいる企業とつながることで自分たちが成長できますし、いろいろなチャンスが生まれます。仙台は、チャレンジしやすい場所だと思います。
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SENDAI INC.:仙台でITに携わる同業者とのつながりはあるのですか?
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我妻さん:ありますよ。SRA東北は「宮城県情報サービス産業協会(MISA)」というIT企業の団体に所属しており、弊社の代表の阿部が会長を務めさせていただいているのですが、そこでは定期的に総会を行ったり、人材育成に取り組んだりしています。IoT開発に力を入れている企業やハード面を支える事業を行う企業も所属しているので、そうした企業と新しいことを始めてみようと話をすることもありますよ。他の地域と比べると、横のつながりは強いかもしれませんね。社長同士も仲がいいです。
課題のある地域にこそAIの活用を
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SENDAI INC.:そうした連携もある中で、SRA東北が仙台でAI事業を推進できた理由は何だと思いますか?
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我妻さん:仙台のインフラが古いから、でしょうか。都市基盤が古くなってきたからこそ、AIが必要になってきたのではないかと考えています。仙台は海も山も田畑もある素敵な場所ですが、東京のような都市と比べて人口は少なく、高齢化が進んでいますよね。今の世の中の課題が全部集まっているような地域だからこそ何かしらのアプローチができるし、いろんなことができる。それがチャンスにつながったのだと思います。
日々変化する社会情勢やIT技術を学ぶための情報収集は欠かせない。
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SENDAI INC.:SRA東北が目指す、今後の取り組みを教えてください。
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我妻さん:私たちの会社は全国に展開しているので県外での仕事も多いのですが、もっと地元企業とおもしろいことや話題になるようなことに挑戦したいですね。しかも、まだ誰もやっていないことをね。そして世界に通用するシステムやAIサービスもつくってみたいです。そこで仕事がさらに増えることで、地元の雇用創出にもつながると思います。雇用を生み出し、多くの人を仙台に集めることも、地元を盛り上げるためにとても必要なことだと思っています。
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SENDAI INC.:今後AI事業に取り組もうと考えている企業にアドバイスやメッセージをお願いします。
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我妻さん:絶対に攻めた方がいいですよ。何でもやってみないとわからないですからね。SRA東北の経営理念は、「進化とチャレンジ」。世の中の人を楽しくさせるためには新しいことにチャレンジをして進化していかないといけないよね、という理念に基づいて動いていくことで、必然とチャレンジングな社風になりました。結果が成功でも失敗でも、とにかく何かに挑戦してみる。その繰り返しで、次の展開が訪れるようになるのだと思います。
Photo:寺尾佳修
Words:及川恵子