11/22TUE

PEOPLE

「SELECT * FROM 仙台
WHERE 本社 = ‘外資’」
CDataが
仙台に本社を置く理由

「SELECT * FROM 仙台 WHERE 本社 = ‘外資’」は、「仙台から本社が外資の企業を抽出する」というSQL文です。
SQLが理解できる方は思わずくすっとしたのではないでしょうか?

 

2016年、仙台市に日本法人が設立された「CData Software Japan 合同会社」は、米国ノースカロライナ州にグローバル本社を置くIT企業です。外資系IT企業が日本本社を仙台市に置いているのは他に例がありません。

 

今回は、CDataがなぜ仙台市に拠点を構えたのか? 仙台から日本全国に、そして世界にビジネスを展開するためにどのような取り組みをしているのか? などについて、同社代表社員の疋田圭介さんにお話を伺いました。

 

 

今回お話を伺った人

疋田圭介さん

疋田圭介さん/CData Software Japan
代表社員 職務執行者。仙台市出身。

 

 

CDataの看板

クライアントを選ばず
どんなツールとでも接続・連携できる「CData」

  • SENDAI INC.:CDataの事業内容を教えてください。

  • 疋田さん:ひと言で言うと、「クラウドサービスに接続するコネクタ屋さん」です。扱っている製品は、大きくカテゴライズすると「データ連携ツール」に含まれますが、独立して使われる「データ連携プラットフォーム」ではありません。
    他のデータ連携ツールや分析ツールへの接続機能だけを提供するという、ユニークなポジションの製品です。

  • SENDAI INC.:ツールとツールを接続するためのツール……ということでしょうか。

 

モニターを見る疋田圭介さん

  • 疋田さん:そうですね。では例えば、TwitterとExcelを連携させてみましょうか。Twitter上で「仙台×IT」という単語がどれくらいツイートされているかを調べて、Excel上にリストとして表示させてみましょう。

 

「仙台×IT」が使われているツイートをエクセルでリスト化したもの

ものの数秒で大量のデータが抽出できる

 

  • 疋田さん:この作業自体は、エンジニアが頑張ればできるんです。でも、手間も時間もかかるんですよね。CDataのツールを使えば、それがもっと簡単に、しかも速くできます。

 

Excelに「仙台ITのインタビューなう」と入力している

今度はExcel側にデータを入力してみる

 

  • 疋田さん:あくまでデータ連携ツールですから、片方からデータを抽出するだけではありません。Excel側にテキストを打ち込めば、ちゃんとTwitterのUIにも反映します。

 

仙台ITのインタビューなうとツイートされたTwitter画面

Excelに打った文章がツイートとしてTwitter側に表示されている

 

  • 疋田さん:わかりやすい例を挙げると、こういう感じです。今回はTwitterで説明しましたが、これがSalesforceやkintone、Google系のサービス、SAPなのかの違いで。要は、クライアントを選ばずどんなツールとでも接続できる。
    あくまでつなぐだけなので、「CData」という何かがあるわけではないんです。そういう意味では地味ですが、非常に有用なソフトなんですよ。Web APIをデータベースのように扱える、と言えばわかりやすいでしょうか。

CDataの製品に惚れ込み、日本法人立ち上げを決意

  • SENDAI INC.:CDataはもともと米国の企業ですが、日本での活動を始めたのは?

  • 疋田さん:2015年から設立準備を進め、2016年に仙台を拠点とした日本法人を立ち上げました。同年3月には、上場企業のアステリア社(当時はインフォテリア社)が、日本初の大口OEMとして自社製品にCDataを採用してくれました。

  • SENDAI INC.:日本法人立ち上げの経緯は?

  • 疋田さん:このCDataという製品に、私自身がほれ込んだことが大きなきっかけですね。元々私はメガバンクの銀行員でした。10年ほど勤めて、その大半が計数担当という数字を触りまくる仕事をしていたんです。当時、社内のデータはいろいろなシステムに分散して保管されていて、全体を分析するのに本当に苦労したものでした。
    その後IT企業に転職し、CDataに出会いました。「CDataは日本の企業に絶対必要。これがあれば、仕事がもっと楽になる」と確信し、日本法人を立ち上げることを決めました。

思考と決断のための時間とリソースを作り出すための製品

疋田圭介さん

  • SENDAI INC.:「CDataの製品によって仕事が楽になる」について、もう少し具体的に教えてください。

  • 疋田さん:CDataはデータ連携のための製品ですが、データを連携すること自体が価値を生むわけではありません。重要なのは、何をどう繋げば業務が楽になるのか、目的を達成するための分析や判断ができるのか、ですよね。それって結局は人間がどうコミュニケーションして、どう数字の裏のストーリーに向き合って、決断をするかなんです。
    だからCDataは、面倒なクラウド連携・API 連携の負担を1/5~1/10にして、本来人間がやるべき思考と決断のための時間とリソースを作り出すものなんですね。

対面に頼らない分、コミュニケーションは丁寧に

  • SENDAI INC.:今日はオフィスにお邪魔させていただいていますが、リモート勤務も自由だと伺っています。社員のリモート勤務率は?

  • 疋田さん:出社・在宅・その他で1/3ずつ分かれています。基本的に出社して全員で会議、みたいなことはしていないので、「その他」の中には県外に散らばっている人も少なくないですよ。

  • SENDAI INC.:コロナ禍でリモートワークがかなり浸透した反面、対面と比べて社員同士のコミュニケーションの取りづらさなどの問題も聞かれますが、そのあたりの対応は?

  • 疋田さん:出社組とリモート組で情報量に差がでないよう、情報は常にオープンに、コミュニケーションを丁寧に、といったことは心がけています。ミーティング上で新しい話題を持ち出さない、とかね。オフィス内での会話も基本チャットですし。

  • SENDAI INC.:顧客対応でもこれといった問題はありませんか?

  • 疋田さん:当社の強みは、製品とマーケティングです。最初からそう決めていますし、ユーザーもエンジニアが多いので「営業よりサポートと情報提供を」というニーズが多く、とくに問題なく回っていますね。
    仮に会社の強みが対面や人的サービスであった場合は、仙台など地方からリモートを基本としたビジネス展開をしようとしても限界があるでしょう。

  • SENDAI INC.:今後の展望を教えてください。

  • 疋田さん:「データ連携を簡単に」、それだけです。

疋田圭介さん

震災をきっかけに「戻らない」と決めていた仙台へ

  • SENDAI INC.:日本の拠点を東京など都心部ではなく、あえて仙台に置いた理由を教えてください。

  • 疋田さん:東日本大震災が1つのきっかけになったのは間違いないですね。震災当時、私は銀行員でインドネシアのジャカルタに駐在していました。その後すぐに帰国し、しばらくは東京で生活することになったのですが、地元の知人から震災の話を聞いたり、また自分の子どもの育児のことを考えたりするうちに、仙台への想いが強くなっていったんです。

  • SENDAI INC.:東京から仙台に戻る直接のきっかけとなったのは?

  • 疋田さん:仙台のIT企業に誘われて戻ることを決めました。元々、仙台に戻る気は一切なかったんですけどね。

  • SENDAI INC.:お気持ちが変わったのはどうしてでしょう。

  • 疋田さん:震災からの復興とはいっても、多くの人が仙台を離れて首都圏で仕事をしているなかで、どれほど再生産可能なビジネスが育つのか?と、知人から悩みを聞いているうちに、「自分にも、IT という場所にとらわれないフィールドなら仙台で仕事ができるのではないか?」という思いが湧き上がってきたからです。
    それに、子育てをするなら首都圏よりも仙台のゆったりとした環境が望ましいと思いましたしね。

「東京から仙台へ
 UIJターンしてキャリアアップ」の道を拓いた。

  • SENDAI INC.:CDataには優秀なエンジニアが揃っていると伺っています。人材確保はどのように進めたのでしょうか。

  • 疋田さん:仙台出身のエンジニアって大勢いるんですよ、100万都市ですし。で、潜在的に帰りたいと考えている人も多い。そういう優秀なエンジニアがなぜ東京で働き続けるかというと、「おもしろい仕事があるから」それだけなんです。
    なら、「仙台に来ればもっとおもしろい、レベルの高い仕事ができる」「キャリアアップになる」そう思ってもらえればいいわけです。

 

お話する疋田圭介さん

  • 疋田さん:CDataは、2015年当時はすごく小さなベンダーでした。日本国内での認知度もないに等しいわけです。
    けれど、「仙台に日本本社を置くフルスタックな自社製品企業」という他に例のないポジションで打ち出し、最初から「優秀なエンジニアがキャリアアップできる環境がある」という雰囲気を見せることで、結果的に良い人たちに集まっていただきました。
    すべてオープン採用で、大半がUIJターンしてきた人たちです。

  • SENDAI INC.:近年は時間や場所にとらわれない働き方が推進されています。仙台を拠点にされている CDataはまさにそれを実践していると言えると思いますが、実感としていかがでしょうか。

  • 疋田さん:CDataがBtoD(Business to Develpers)を主軸としたビジネスなので、リモートモデルとフィットした、というところも大きいかとは思います。メンバーにも恵まれましたしね。どんな業種にも当てはまるとは言えないでしょうが、物理的な間口を東京に持たなくても構わない領域は他にも多くあると思います。

効率化のために常識を疑え。
何を捨て、捨てないかを常に考える。

疋田圭介さん

  • SENDAI INC.:先程、設立当時のCDataは認知度がほとんどなかったと伺いました。且つ、あまり対面での営業にも力を入れていないとお聞きしています。そのような状況から、日本全国や世界へ向けて思いやサービスを届けるために意識したことは?

  • 疋田さん:「CData」という社名を売るのではなく、必要としている人に製品そのものを届ける仕組みですね。いわゆる「デベロッパーリレーション」と言われる、開発者向けのマーケティングに注力しました。そのへんについては、結構対面での営業もやっているんですよ。

 

微笑む疋田圭介さん

  • 疋田さん:あとはひたすら記事を書きまくること。顧客の困りごとに対する回答になる記事をたくさん書けば、「CData」という名前を知らなくてもうちのソフトがブラウザ上で上位表示されますから。その記事からトライアル版をダウンロードしてもらって、気に入ってもらえば買っていただく。その流れが可能になるんです。
    1つ何かを聞かれたら、1つ記事を書く。そうすると仕事がN倍化しますし、記事数が1000とかになると、それだけでビジネス流入になりますから。

  • SENDAI INC.:社名を売らずに製品だけを売る仕組み、非常に効率的な考え方ですね。

  • 疋田さん:N倍化や効率化って、エンジニアのDNAに組み込まれているものですからね(笑)。そのために、「異なることを恐れない」を常に意識しています。他社はこうやっている、という常識をいちいち疑うんです。
    「この常識は、本当に唯一の答えなのかな?」と。そのなかから「何を捨てるか」「どうしても捨てられない価値とは?」をひたすら考えています。

    アメリカでは、シリコンバレー以外にもたくさんのIT企業があります。彼らがフェイス・トゥ・フェイスで仕事しているわけないですよね。それにインドネシアやミャンマーなどの新興国の仕事のスピード、恐ろしいほどです。
    そういった経験をしているからこそ、日本の「要求されたことをすべてやる」という村的な考えを捨てています。

仙台からグローバルへつながる。可能性は無限にある。

お話する疋田圭介さん

  • SENDAI INC.:仙台市に日本本社を置くIT企業として、仙台へのUIJターンを検討している人、IT業界で働きたい仙台の学生向けに何かメッセージをお願いします。

  • 疋田さん:仙台はご飯もおいしいし、東京みたいに混雑していないし、住むには最高の環境です。出身地でもありますから、個人的にはとても気に入っています。だからと言ってずっと仙台にいて、仙台相手にビジネスをするのが良いとは思いません。
    ずっと狭いところにいると、考え方やサービスも内向きになってしまいますから。仙台から日本全国とつながる、グローバルにつながる、価値を提供する仕組みを整えることが大切だと考えています。

    だから一度外に出て、まずは自分のやりたいことを知る方がいい。そのうえで、仙台がフィットするなら戻ってきてビジネスをするのがベストだと思います。
    一度力がつけば、仙台からできることは無限にあるはずです。逆にそういう人が増えればもっと楽しく仕事ができるようになるでしょう。

    ということで、仙台という地方からもグローバルにつながれる、高いレベルで仕事をしたいITエンジニアの方や、セールスやマーケティングの方がいらっしゃいましたら、ぜひお声がけください。CDataでは通年で採用を行っています。
    私たちとぜひ一緒に、仙台で楽しい仕事をしてみませんか。

PROFILE

CData Software Japan 合同会社

CData Software はデータ連携ソリューションのリーディングプロバイダーです。ユーザーの多様なデータへのアクセスを標準化することをミッションとしています。 Web API、DB、オンプレミスアプリケーションへのリアルタイムアクセスを実現するデータドライバーおよび データ連携テクノロジーのプロフェッショナルです。

CData Software Japan 合同会社

Photo:SENDAI INC.編集部
Words:岩崎尚美
※撮影時はマスクを外していただきました。