03/31THU
PEOPLE
仙台から世界へ
等身大フィギュアを
つくるデザインココ。
デジタルとアナログで
続ける革新とは?
株式会社デザインココは、等身大フィギュアの制作で世界でも大きな話題をさらう立像制作の会社です。
岩手県との県境にある宮城北部の街、登米市から仙台へ。さらに仙台から世界へと発信を続けています。
今回お話しを伺ったのは、そんなデザインココで活躍しているディレクター大内さくら(おおうち・さくら)さん、プロデューサー大場春香(おおば・はるか)さん。
国内外から注目を集める、制作の現場にも特別に潜入させていただきました。あなたの好きなあの漫画やアニメのフィギュアも、デザインココで作っているのかも!
(左)大場春香さん、(右)大内さくらさん
SENDAI SIDEでは仙台から発信を続ける理由、お二人が仙台で活躍するきっかけをお伺しました。
看板職人の発想から生まれ、
ITで発展したフィギュア作り
ーーデザインココの立ち上げや、フィギュアを作り始めたきっかけを教えてください。
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大内さん:代表の千賀が宮城県登米市でデザイン会社を立ち上げました。グラフィックの他にも、看板や造形物の制作を行っていました。
ある時、看板職人が発泡スチロールを削って立体造形物を作っていたんです。それが「おもしろいね」となって、立体造形物に力を入れるようになりました。 -
大場さん:それが約15年前の話です。パソコンが普及し始めてデザインの方法が変わってきた頃でしたね。
その後、代表は3Dプリンターや3DCGなどの新しい技術を積極的に取り入れてきました。
大きな3Dプリンターが無かったので、自社で3Dプリンターを作ったこともありました。
数年前まではフィギュア制作に3DCGを取り入れる会社はほとんどなくて、「手仕事の世界」だったんです。
弊社は、職人の手仕事が当たり前だった業界にITを取り入れた先駆者だと思います。
東北・仙台の人たちに
好きなことを諦めて欲しくない
ーー拠点を登米から仙台に移されていますよね。
出版社やアニメーション会社はほとんど東京にあると思うのですが、東京ではなく仙台だった理由はなんだったのでしょうか。
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大内さん:「故郷の宮城に拠点を設けたい」という代表の想いが強いからです。
また、仙台は「学都仙台」とも呼ばれ、全国や東北から優秀な学生が集まります。
東北には真面目で一生懸命な方が多く、仕事に対しても真摯に取り組む方が多いと思います。 -
大場さん:毎年、新入社員を採用しているのですが、人材育成も地域貢献の一つだと考えています。
家庭の事情で上京できない方もいる。でも、好きなことへの挑戦を諦めないでほしい。
東北・仙台でも世界へ発信できるクリエイティブなものづくりができることを我々が証明したいです。
ここではいろんな道があり、
得意なことで活躍できる人材になれる
ーーお二人がデザインココを知り、就職まで至った経緯を教えてください。
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大内さん:元々は、東京でテレビ番組制作会社のアシスタントディレクターをしていました。
やりがいを感じながら充実した日々を送っていたのですが、家庭の事情で泣く泣く地元の仙台へ帰ることになりました。
仙台では東京と同じような仕事のやり方はできないのかな、と不安に感じていました。
でも、デザインココの「全国だけでなく、世界中の人へ良い作品を届ける」という考えに魅力を感じ、志望しました。 -
大場さん:私は地元・山形の高校を卒業後、仙台のデザイン専門学校に進学しました。
その後、グラフィックデザイナーとしてデザインココに新卒で入社したんです。
しばらくしたら、代表に「あなたはデザインに向いていない」と言われてしまいました。
ーーそれはショックだったんじゃないですか?
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大場さん:「そうなんだ〜」って率直に受け入れました(笑)
それから、代表のアシスタントのような形でプロデューサーを始めました。
向いていないことを続けて苦しい思いをするよりも、得意なことを伸ばせたので良いきっかけになりました。
高校が建築系だったので、ミュージアム関連の展示工事を担当した際は図面を書きました。
そうやって、今までの経験は至る所で生きています。他の社員にも「いろいろな道があるよ」という良い事例になったのではないでしょうか。
ITSIDEでは実際のお仕事の現場を見学した様子をレポート。さらに、インタビューで「仙台から世界へ」飛躍を続ける、その技術と信念に迫ります。
フィギュア制作の大まかな流れは、①企画、②CG制作、③3Dプリント、④塗装仕上げ。今回、見学させていただいたCOCO 仙台本社では主に①〜③の作業を行い、COCO-MANでは③でプリントした造形をさらに磨き組み立て、作品の型取りを行なっています。
その後、型取りをしたら、実際に型に流して組み立ができるか検証。彩色をして見本を作ります。あとは、中国の工場で大量生産され、私たちの手元へ届くのです。
COCO 仙台本社
デジタルを活用した高度な設計
COCO 仙台本社では、3DCGと3Dプリンターを使ったデジタルを活用した作業を行なっている。
3DCGを使った設計の風景。前のデータを活用したり、画面上で検証や修正ができたりと時間が短縮できるように。その分、クオリティを高めるほうへ集中することができる。
デザインココで設計・開発をした高性能の3Dプリンター。
立体像として実際に出力し、スケール感やバランスを確認しながら調整を重ねる。
スカートの裾も一枚一枚プリントして、重ねることでフリルが完成。
余分な部分を取り除き、造形物をCOCO-MANのオフィスへと運びます。
COCO-MAN
アナログな職人技が光る手仕事の現場
COCO-MAN オフィスでは、職人の手で型取りや組み立てなどの手作業を行います。
磨き組み立てた後は、型取り作業へ。気泡が入らないように考えながら作業を進める。
シリコン型を固める装置もなんと手作り!こたつの部品を使って保温することで硬化させている。
出来上がったシリコン型、よく見ると溝ができているのが分かります。一つ一つの細かく丁寧な作業に驚きました。
時代を先取るチャレンジ精神と
風通しの良い環境が成長へのヒント
ーー全国や世界の人へ楽しんでもらえるものづくりへと成長した理由を教えてください。
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大内さん:時代の流れを読み、知識や技術を先取りして、どんどんチャレンジするからだと思います。
漫画やアニメはトレンドが頻繁に変わるので、追いつくためにはスピード感が大事です。
また、他社とも協業することによって、技術力を高めています。
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大場さん:モチベーションが高く、協力的なので社内の雰囲気も良いと思います。
常時、登米、仙台、東京をリモートでつないでいるので、仙台で議論が白熱している様子も他の事務所に伝わります(笑)
それだけ、風通しの良い環境なんです。
我々の仕事は、個々の役割が決まっていて、チームプレーで進めます。
代表からは「バトンを受け取りやすくなる工夫をしなさい」とよく言われます。
前の人が楽をせず、しっかり段取りを整えることで、次の人が仕事を進めやすくなるように心がけています。
全国や世界へ感動を届け、
ファンの喜びの声を感じる
ーー仙台から全国や世界へ届ける仕事をしている実感を得たエピソードはありますか?
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大内さん:SNSでファンの方が発信してくれると嬉しいです!
全国や世界中のファンの方が投稿してくれる喜びの声を見ると実感が湧きます。 -
大場さん:展覧会では、実際に足を運んで生の声を聞きに行くこともあります。
過去にはアメリカにも行きました。感動してくださっている方をこっそり見て、ニヤニヤしていました(笑)
今は新型コロナウイルスの影響で海外に行くことが難しいですが、また社員一同で伺えたら嬉しいです。
最高のパフォーマンスができる環境づくりを
ーーそんな世界へ感動を届けるお仕事をしているお二人ですが、仕事をする上で気をつけていることや大事にしていることは何ですか?
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大内さん:私たちは、業務がスムーズに進行するような調整役を担当しています。
それぞれが最高のパフォーマンスを発揮できるような環境づくりや心配りを大切にしています。 -
大場さん:そのために、みんなの意見を引き出し、実行に移せるよう常に考えています。
広報、人材育成、新事業……今後も発展を続ける
ーー最後に、今後の目標があれば教えてください。
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大内さん:デザインココの認知度をさらに上げることです。漫画やアニメに詳しくない人にも、仙台にこんなにすごい会社があることを知ってほしいです。
今後は、SNSなどを活用した広報に力を入れたいです。 -
大場さん:大内にディレクションの仕事を引き継ぎながら、今は採用や新人教育に力を入れています。
新入社員が社会人として成長していく姿を見ると、やりがいを感じます。
また、今後も新しいことにチャレンジし続けます。
新事業を計画しているので、ぜひデザインココのWebサイトやSNSをチェックしてもらえると嬉しいです!
何でもデジタルで終わらせるのではなく、アナログの手作業も大切だと語ってくれたお二人。たくさんの人や丁寧な作業風景を拝見させていただき、感動しました!
現在では、東北だけでなく全国からも入社の応募が来るというデザインココさん。今後の活躍も楽しみです!
PROFILE
1枚のイラストからデータ制作、3Dプリンター出力、最終塗装のアナログ作業まで、クオリティーにこだわって社内一貫生産を行っています。 制作しているものは、小さいものだと約10cmからのスケールフィギュアや、大きいものだと等身大サイズや約3mと様々。 宮城県を拠点に、新卒採用・地元採用を積極的に行い、新人育成に力を入れています。
株式会社デザインココ(仙台本社)
Photo:SENDAI INC.編集部
Words:笠松宏子
※撮影時はマスクを外していただきました。