03/31FRI

PEOPLE

実はこんなに幅広い!
仙台ITトップランナーに聞く
奥深きエンジニアの世界

スキル差、案件の違い
エンジニア目線で見る仙台と東京の違い

ちょっと活動状況が見えにくい仙台のITコミュニティ。「仙台IT初心者さんにとって、もっと参加しやすい土台を作りたい!」そんな思いで立ち上がったのが、SENDAI INC.編集部。
新たなコミュニティが盛り上がっていると噂の WeWork 仙台にお邪魔し、仙台のITコミュニティについて語り尽くす、熱い居酒屋 inc.を開催しました。
仙台にはどんなITコミュニティがあるの?上手なコミュニティの選び方、既存のメンバーに馴染む方法は?……などなど、気になるあれこれを、仙台でITコミュニティを運営されているみなさんに聞きました。

 

左から石田光明さん五十幡有紀さん佐藤卓さん藤本翔太さん

<参加いただいた方>
左から 石田光明(いしだ・みつあき)さん……株式会社O-DE所属。デザインの責任者として、さまざまなプロジェクトの支援を行う。仙台市出身。高校卒業後に上京し、2021年1月にUターン。仙台のITコミュニティに興味があり、情報を求めている。Designship Studio 東日本コミュニティチームで活動中。
五十幡有紀(いそはた・ゆき)さん……株式会社テンダ・東北支店の支店長代理。埼玉県出身。夫の転勤に伴い全国を転々とし、2度目の仙台転勤時に永住を決意。一般社団法人宮城県情報サービス産業協会の女性交流会「ミサリー」を運営。
佐藤卓(さとう・すぐる)さん……株式会社テンダ・東北支店主任。秋田県出身。高校卒業後、仙台の専門学校に進学し、そのまま仙台に住んでいる。社員の9割がエンジニアで構成されるテンダにおいて、希少なWeb ディレクターを務める。「チームテンジニア」を運営。
藤本翔太(ふじもと・しょうた)さん……株式会社ナチュラルの代表取締役。システムやWEB、スマホアプリの開発をメイン事業とする。最近ではペット漢方の販売も行う。宮城県登米市出身。高校卒業後は岩手県で製菓職人や板前として働いた。震災を機にIT事業で起業し、仙台へ。「IT飲み会」など複数のコミュニティを運営している。

それぞれが運営するコミュニティ紹介

 

左から石田光明さん五十幡有紀さん佐藤卓さん藤本翔太さん撮影場所: WeWork JR 仙台イーストゲートビル

  • SENDAI INC. :石田さんを除く3人は、ITコミュニテイを主催・運営されていると伺っています。それぞれのITコミュニティについて教えていただけますか?

  • 五十幡さん:前提として私は、宮城県情報サービス産業協会(MISA)という団体に所属しています。MISAは、宮城県に事業所のある企業が参加するIT組合です。私は、そのMISAに所属する女性会員による交流会「ミサリー」の主催・運営をしています。

 

五十幡有紀さん

  • SENDAI INC. :具体的にはどんな活動を?

  • 五十幡さん:IT業界は女性がとても少ないです。なので、女性同士で集まって勉強したり、交流したりする場がほしいよね、という声から生まれたのがミサリーです。年に2回ほどイベントを行っています。内容は、勉強会を1時間、その後お茶やお菓子をいただきながらの交流会が1時間の、合計2時間構成です。毎回、大体20名くらいの方が参加されますね。

  • SENDAI INC. :IT系の勉強会ですか?

  • 五十幡さん:いえ、ビジネスマナーやパーソナルカラー、フラワーアレンジメントなど、テーマはいろいろです。ITスキルを学ぶのは、女性限定である必要がないですから。ミサリーの活動はあくまで、女性同士の交流や情報交換がメインですね。

  • SENDAI INC. :佐藤さんは、「チームテンジニア」を運営されていると伺いました。

  • 佐藤さん:はい。テンジニアは、私が所属するテンダが主催する勉強会です。「テンダ」と「エンジニア」をかけ合わせた名前になっています。内容は、社内に所属している技術者によるプログラム言語の講習など、IT系のテーマがメインですね。私が講師を務めるときは、Webライティング入門など、ちょっと変わったテーマで話すこともあります。

 

佐藤卓さん

  • SENDAI INC. :テンジニアは、社内向けのITコミュニティなのですか?

  • 佐藤さん:成り立ちはそうです。でも2021年頃から社外の方にもテンダについてもっとよく知ってもらおうと、「勉強会のおすそ分け」を始めました。

  • SENDAI INC. :ということは、社員でなくても参加できる?

  • 佐藤さん:はい。テンジニアはオンラインとオフラインのハイブリッド開催です。オンライン視聴であれば、事前に参加表明だけしてもらえればどこからでも参加可能です。開催場所はちょうどここ WeWork 。ですのでこの場所にいる方は、自由に見られます。

  • SENDAI INC. :藤本さんは多数のITコミュニティに所属しているとか?

 

藤本翔太さん

  • 藤本さん:そうですね。運営しているITコミュニティの話でいうと、もっとも規模が大きいのが「IT飲み会」です。IT飲み会は、世界最大規模の飲み会式ビジネス交流会。目的はお酒を飲んで参加者同士でコミュニケーションし、売上を上げよう!と非常にシンプルです。東京をはじめ全国に支部があり、私を含め数人で仙台支部を運営しています。

  • SENDAI INC. :内容は、集まってお酒を飲みつつ交流するだけですか?

  • 藤本さん:それも大きいですが、毎回プレゼンターを呼んで、その方の話を聞くのがもう1つのメインコンテンツです。来てくださる方の業種はバラバラで、人材系やマーケティング、税理関係など、幅広いです。

  • SENDAI INC. :IT飲み会だけど、ITの話ばかりじゃないんですね。

  • 藤本さん:IT飲み会という名前ですが、実はとても広義にとらえていまして。IT関係の仕事をしている人だけでなく、これからITの活動をしたいとか、ちょっとしたITツールを使っているとか、そういう人でも全然OKです。テーマに賛同していただける人であれば、参加するにあたっての制限はほとんどありません。

運営者直伝!ITコミュニティの上手な探し方、選び方

 

自動サーバーから注がれるアルコール飲料

  • SENDAI INC.:仙台にも、実はいろいろなIT系コミュニティがあるのですね。これからコミュニティを探そうと考える人向けに、上手な探し方や選び方を教えてください。

  • 佐藤さん:テンジニアの場合は、「connpass(コンパス)」というイベント告知サイトで募集をかけています。そういうところにアンテナを張っておくといいかもしれませんね。

 

石田光明さん

  • 石田さん:connpassは僕も利用しています。1つ面白そうなイベントを見つけると、そこからまた別のイベントを見つけたりと派生していくから、見ていて楽しいです。

  • 藤本さん:Facebookページにイベントの案内を出すこともあります。

  • 佐藤さん:以前、個人的に朝活のイベントを主催していましたが、同様にFacebookを使っていました。探し方は、例えば検索窓に「仙台 朝活」と入れると結果が出てくるので、気になる言葉で試してみるといいかもしれません。

  • 石田さん:Facebookだと、「友達がこのイベントに参加予定です」と通知がきて、それで知ることもあります。

  • SENDAI INC.:そうやって見つけたITコミュニティのうち、どれに参加したらいいのか迷うことがあるかもしれません。上手な選び方は?

  • 藤本さん:そのコミュニティの目的が明確かどうか、は1つの指標だと思います。テンジニアなら勉強会が目的。IT飲み会なら人脈を作り、売上を上げるのが目的です。そこが不明確なところは避けた方が良いかもしれません。

コミュニティを運営してみて感じる、やりがいやメリット

 

奥から石田光明さん五十幡有紀さん佐藤卓さん藤本翔太さん

  • SENDAI INC. :コミュニティを運営する前と後で、心境の変化はありましたか?

  • 五十幡さん:そうですね。以前、参加者側でミサリーに参加していたときは、コネクションを作るとか、営業に役立てたいという思いが強かったです。でも運営側になって、気持ちが大きく変わりました。参加してくれた方たちから、「自分と同じエンジニアの女性と交流できて、すごく良い時間だった」といった声をもらえると、それがとても嬉しいんですよね。参加者のみなさんの役に立てている、喜んでもらえる場を提供できていることに、とてもやりがいを感じます。

  • 佐藤さん:主催側に立つと、人との接点がすごく増えますね。そのぶん、知見が広がります。いち会社員として働いていると、どうしても狭い範囲の人としかコミュニケーションできなくなり、その範囲内の常識に縛られてしまいがちです。良い意味で、そういった常識を崩してくれます。

  • 藤本さん:参加側と運営側とで圧倒的に違うと感じるのが、参加者への連絡のしやすさですね。参加側でももちろん、名刺交換や会話をして他の参加者との接点は作れるのですが、運営側にいるとより、些細なことでも連絡しやすいです。

  • 佐藤さん:交流会に参加したら声をかけられて、怪しい商品をすすめられたなんて話もありますしね。

 

左から佐藤卓さん藤本翔太さん

  • 藤本さん:そう。そういう話、けっこうあるんですよ。だから参加者側も、どうしても警戒してしまうんです。その点、運営側からの連絡ならほぼ警戒されません。つながりを作りやすいのが、運営側に立つ大きなメリットかなと感じます。

  • 石田さん:すごく勉強になります。僕からも質問いいですか?

仙台ITコミュニティならではの良さは、横のつながり

 

石田光明さん

  • 石田さん:みなさんのコミュニティは、仙台に住んでいる人が参加するケースがほとんどだと思います。コミュニティにも地域差、地域性みたいなものがあると思うのですが、「仙台ならでは」な点はありますか?

  • 藤本さん:ありますね。よく、一般的に東北の方は閉鎖的だと言われますが、1回参加してもらって打ち解けると、めちゃめちゃ仲良くなるんですよ。1回目のハードルだけがすごく高いけど、そこを乗り越えるとものすごく強固なつながりができる。

  • 五十幡さん:仙台って、横のつながりが強いですよね。東京だと、いろいろなITコミュニティやつながりがあるからか、ドライな人が多い印象です。でも仙台だと、1回国分町で飲んだら、もうみんな友達!みたいな。

  • 石田さん:連帯感があるんですね。

  • 藤本さん:IT飲み会はそれが顕著で、5次会までやったりしてますから(笑)。

  • 五十幡さん:良い意味で密ですよね、関係性が。とてもいいと思います。そこからお仕事につながることも多いですし。

初見でもウエルカム!周りと打ち解けやすい配慮も◎

  • SENDAI INC.:横のつながりが強いのは、コミュニティとして大きなメリットですね。ただ、これから入ろうとする人にとっては馴染めるか不安もあると思います。そのあたりはいかがですか?

  • 藤本さん:IT飲み会は、飲み会という場で新たな人脈をつくることを目的としているので、初参加の人って全然珍しくないですよ。また、より場に馴染みやすいように、30秒間のスピーチタイムも設けています。

  • SENDAI INC.:それはどういうものですか?

  • 藤本さん:受付時に初参加かどうか聞いて、初参加の人には初心者マークをつけてもらいます。その後、場があたたまってきたタイミングで、初参加の人には1人30秒間好きなように喋ってもらいます。仕事のことでも、趣味のことでも内容は何でもOKで。相手のことがわかれば、会話も弾みやすくなりますからね。

  • 五十幡さん:ミサリーも、お話がしたくて参加している女性ばかりなので、そのへんは全然心配いりません。毎回自己紹介タイムを設けていますし、初参加の方がいれば周りの方が率先して話しかけにいきますので。「もう終わりです」って声をかけても、話が盛り上がっていて、みなさんずーっと残って喋ってますよ(笑)。

  • 石田さん:初見でもウェルカムな雰囲気ですね。安心しました。

仙台は魅力的なまち「もう引っ越せません!」

 

左から石田光明さん五十幡有紀さん佐藤卓さん藤本翔太さん

  • SENDAI INC. :石田さんは仙台にUターンしてきたんですよね。東京から戻ってきて、思うところはありますか?

  • 石田さん:東京に住んでいた頃は通勤に1時間以上かかっていて、しかも満員電車で、毎日本当にしんどかったんです。仙台は、ピークの時間から少しずらせばそこまで混まないのがいいですね。電車やバスでもほどよくパーソナルスペースを確保できるので、通勤時間を読書タイムにあてて、効率よくインプットしています。

  • 藤本さん:東北で車がなくても生活に困らないのは、仙台だけですよね。状況に応じて電車にするかバスにするか車にするか、選択肢を多く持てるのは仙台のメリットだと感じます。

  • 佐藤さん:都会の要素も田舎の要素も持ち合わせていて、ほどよいですよね。街が大きすぎないのが仙台の魅力かなと思います。少し足を伸ばせば山も海も温泉もあるし。且つ、東京へのアクセスも良いです。

  • 五十幡さん:本当にそう思います。私は埼玉出身で。関東に住んでいると、どこかレジャーに行こうと思ったら、前もって計画しないとなかなか実行できないんですよ。でも仙台って、朝起きて、思い立ってすぐにスノーボードに行けたり、温泉に行けたりする。

  • 石田さん:関東だと、高尾山とか行かないとですよね。

 

五十幡有紀さん

  • 五十幡さん:そうそう。「よいしょっ!」って、気合入れて計画しないとなかなか行けない。レジャーに行きたい!って思ってすぐに行けるのは、仙台の最大の魅力だと思いますね。もう引っ越せません(笑)。

  • 藤本さん:東北6県の中で一番発展しているし、困った時に助けてくれるサービスも充実していますよね。

  • 五十幡さん:うん。仙台って、とても子育てがしやすい街だと思います。働きながら子ども2人を育てていますが、行政によるシッターサポート事業には何度も助けられました。街はきれいに整備されているし、自然豊かな場所で子どもをのびのびと育て、仕事もできる。すごく魅力的なまちです。

ちょっぴり見つけにくいかもしれないけれど、実は仙台にもさまざまなITコミュニティが存在することがわかりました。最初はハードルが高く感じるかもしれませんが、しっかりと受け入れ体制が整っています。

「一度参加すれば、すごく仲良くなれる」仙台のITコミュニティならではの密なつながりを、ぜひ実感してみてください。

※取材時には「黙食」を徹底の上、写真撮影時のみマスクを外していただきました。

PROFILE

WeWork 仙台拠点

2010年に米・ニューヨークで創業した WeWork は、全世界39か国750拠点以上*でフレキシブルオフィスを展開しています。 WeWork JR SENDAI EAST GATE BUILDINGは、JR仙台駅直結での拠点。 東北の主要ハブでありビジネス拠点である WeWork 仙台拠点は自主的に人が集まりつながっていくコミュニティとアットホームな雰囲気に包まれる拠点となっております。 *2022年3月時点 ©︎ WeWork

五十幡有紀(いそはた・ゆき)

株式会社テンダ

埼玉県熊谷市出身。エンジニア・IT営業を経験 旦那の転勤で各地を転々、2度目の仙台赴任時に移住を決意。子育てのため専業主婦→派遣社員でテンダに事務員として入社し3ヵ月後正社員になり現在9年目。当時の上層部の無茶振りにより営業・人事・総務(エンジニア以外の事)を掛け持ち気付いたら入社5年目で主任に昇格、現在東北支店長代理として組織マネージメントを任させる。

佐藤卓(さとう・すぐる)

株式会社テンダ

秋田出身・仙台在住。新卒で某自動車ディーラーのシステム担当を経験したのち、 転職してクリエーター職に就くも社長が夜逃げする事態に。縁あって現在の株式会社テンダに入社。 現在はWebディレクター職をしつつ、趣味ではサイト運営・動画制作に取り組んでいる。 最近の関心ごとはChatGPTなどのAI技術を使ったモノづくり。

石田光明(いしだ・みつあき)

株式会社O-DE

香港と東京をベースに活動する多国籍かつ専門性の高いチームで構成されたアドバイザリーファームのデザイン責任者。 新規事業立案、市場調査、チーム組成、資金調達支援、UI/UXデザイン支援など顧客とユーザーのニーズに合わせたサービスを提供しています。

藤本翔太(ふじもと・しょうた)

株式会社ナチュラル

宮城県登米市出身。高校を卒業後、和菓子職人・和食の板前を経た後に、様々なご縁がありウェブのエンジニアに。 現在はオフショア開発に力を入れており、インドネシア、カンボジアの開発チームと一緒に様々なウェブシステム、スマホアプリ等の開発を行っている。

WeWork仙台拠点

Photo:寺尾佳修
Words:岩崎尚美
撮影場所:WeWork JR 仙台イーストゲートビル