01/31FRI
LAB
私たちも仙台市を変えられる!?
「仙台特区」ってなんだ?
国家戦略特区になっている仙台市。
「仙台特区」のサイトを見ていて、思いついた。
ある日、いつものように仙台市の最新の取り組みをキャッチするためにリサーチしていたSENDAI INC.編集部。仙台市のWebサイトのひとつ、「仙台特区」を見ていた編集部員の目を捉えた「アイデア募集」の文字。
クリックすると、「国家戦略特区では、既存の規制改革メニューの他に、新しい規制改革メニューを提案し、活用できるメニューを追加することができます。仙台市では、規制改革メニューに追加する新しいアイデアを随時募集しています。ぜひご提案ください」とあるじゃないですか。
アイデアならありますよ!ということで、問い合わせフォームからメールをしてみると… 「仙台特区」に実際にアイデア提案してみた体験記(※1)をレポートします!
「国家戦略特区」って?
「国家戦略特区」とは、国が指定した地域において法律などに風穴を開け、規制改革することで、民間事業者のみなさんがより一層活動しやすくなる取り組みです。
日本にはたくさんの法律があり、私たち民間の事業者はその法律のルールに則って事業を進めています。 しかし、新しいアイデアの中には既存の法律が足かせになってしまうケースも。日本が新しい時代に対応するために、まずは特定の地域で少しずつ既存の規制を緩和したり新しいルールを設けたりしてアイデアの検証をする仕組みが「国家戦略特区」です。
現在(※2)、仙台市を含め、全国で10区域が指定されています。「岩盤規制」改革の突破口として平成26年に制度がスタートし、仙台市は平成27年に区域指定されました。
さっそく、アイデア募集フォームから応募!
該当の法規制に詳しい担当者の方に相談することができます。
仙台市まちづくり政策局の担当者松原さんからお返事がきて、具体的にアイデア内容を聞いていただけるということで面談の機会をいただけました!
日程を調整して、仙台市役所へ。
編集部員が仙台市まちづくり政策局へ伺うと、メールでご対応いただいた松原さんと、今回のアイデアに詳しい伊沢さんが迎えてくれました。
松原さんと、技師の伊沢さん。
ひとつめのアイデア。
ドローンを飛ばすには、既存のメニューを活用しよう!
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SENDAI INC.:SENDAI INC.でもドローンの検証実験の記事を書かせていただいたこともあって、ドローンを使ったビジネスを始めてみたいなと思っているんです。
たとえば、ちょっとした荷物のドローン宅配はニーズも多いと思うのですが、弊社にはアマチュア無線の資格を持っている人間がまだいなくて。
仙台が特区になっているから「ドローンについてこんなことならできるよ」というものはありますか?
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伊沢さん:ドローンでも、免許が不要なものであれば誰でも飛ばすことができます。
でも、ドローンが使用する周波数によっては免許が必要となります。
その場合は、特区のメニューを使っていただくことが可能です。 -
松原さん:国家戦略特区には、既に活用いただける規制改革のメニューが66種類(※2)あって。ドローン技術などの「近未来技術」のカテゴリに当てはまるメニューは2つになります。
今回の場合は、その中の「特定実験試験局」の項目にあたるものですが、これは電波に係る免許発給までの手続きを大幅に短縮するものなんです。
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伊沢さん:手続きがスムーズなので、スピード感が大切な企業さんには、ぜひこの特区の制度を利用してほしいです。
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SENDAI INC.:ドローンは特区であればどこでも飛ばせるのですか?
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松原さん:仙台市内全域が特区なのですが、ドローンを飛ばす場合は、航空法や電波法の条件、地権者との調整が必要になります。
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SENDAI INC.:そうすると、荷物の宅配ドローンの実験は難しいですか?
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伊沢さん:宅配となると、やはり都市部になるので、特区ではあっても別の規制があってできない可能性があります。
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SENDAI INC.:なるほど。まずは66種類も既にメニューがあるというのには驚きました
「これまでの法律ではだめかも…」と思われることでも、
そのアイデアが66種類のメニューのどれかに当てはまれば、仙台特区内では実現できるかもしれない、ということですね。 -
松原さん:国家戦略特区は、ビジネスとして何か新しいことができないか…という方々のためのものなんです。66もあるメニューから、さまざまなビジネスのチャンスを創出していただくためのものですので、企業さんや学生さん、そして起業を目指す方などが新しいアイデアをお持ちでしたら、ぜひ相談していただきたいです。
(※1) 2019年3月取材時のレポートです。 (※2) 記事公開時点
ふたつめのアイデアは、
既存の法規制で実現できなかった企画。
仙台特区ならどうにかできる?
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SENDAI INC.:実際に過去に企画したことがあるアイデアのご相談です。
東京で学生と話していると、いま自分が研究していることが本当に社会に役に立つのか?まちの課題解決に自分の研究がどう役立つか調査したい、起業したいという学生が多いんです。
そこで、現場を見ながら起業アイデアを練る「仙台起業アイデアソンツアー」を大学横断で広く募ろうとしたら、「旅行業」の資格がいるということが判明しました。
私は「旅行業」の資格は持っていないので、大手の旅行代理店に問い合わせたら、学生が行けるような金額にならなかったんです。
これ、特区でどうにかなりませんか?
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松原さん:お調べしたのですが、やはり学生さんを募って、そこから報酬を得ることは「旅行業法」に抵触するようです。
ただ、特区であることのメリットとして、これまでの規制に対して、新規の提案をすることができるんです。
ですから、この案件について例えば「アカデミックな内容であれば、旅行業の資格なしでも催行できるようにしてほしい」というようなきちんとした条件を付けるなどして、
事業者のニーズに合った提案をすることができる場合があります。 -
SENDAI INC.:いまある66のメニューになくても、新しい規制改革メニューの要望を伝えることができるということですか?
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松原さん:国に対しては、毎日いろいろな自治体からの要望があるのですが、特区では提案を受けて、実現可能性が高いもの、見込みのあるものなんかは、国でワーキンググループ等にかけて検討してもらうことができます。
事業者のニーズを国に上げるツールとして、特区を使っていただくことができるんです。
規制改革メニューを、より役立ててもらうために。
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SENDAI INC.:市民からの声を直接国に届けていただけるってすごいことですね!
アイデアを一般募集する、国や仙台市のメリットはどんなことがあるのですか? -
松原さん:行政としても、一般の方や民間事業者のニーズに合わせて仕組みを変えていきたいという思いがあるんです。
皆さんにより一層活用していただける仕組みを整えて、経済活動をもっと促進したいと思っています。
それをぜひ、仙台市から発信したい。なので特区に直接関係ないかな?と思っても、その規制になっていること関して回答できるよう尽力いたしますし、それが規制緩和のきっかけになりますので、まずはお気軽にご連絡ください!
紹介する情報紙も発行している
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SENDAI INC.:これまでに66あるメニューの中で、仙台市で実現したものはあるのですか?
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松原さん:松原さん 例えば「NPO法人の設立手続きの迅速化」と「一般社団法人等への信用保証制度の適用」ですね。
前者は、これまで特定非営利活動法人の設立には1か月以上の時間がかかっていましたが、
申請書類の縦覧期間が大幅に短縮されました。
後者は、これまで一般社団法人と一般財団法人に関しては、信用保証制度の対象ではありませんでしたが、
これを特区においてのみ、対象を拡大する提案をし、仙台市で初めて実現しました。
これにより、社会起業家の方がよりスムーズに資金調達ができるようになったんです。
規制改革メニューの中では便利なものもたくさんあるので、
より多く活用していただくために周知イベントを開催したり “情報紙”を発行したりもしています。
イベントではいろいろな事業主の方を中心に、ビジネスをもっと発展させるために、興味をもって “事例紹介”を聞いていただけました。
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SENDAI INC.:なるほど。では、私のアイデアを国に要望として提出していただけるよう、もうちょっと内容を濃くして後日提出します!
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松原さん:お待ちしています!
行政や国の規制に提案、となるとどんな堅苦しい書類を作らなければならないのだろう、と気構えての体験取材だったのですが、実際はイメージとは異なり、とてもフランクに相談に応じてくださいました。
新規事業アイデアも求められる時代…今まではできなかったことも、仙台特区でならトライできるかもしれません。まずは特区規制改革メニューをながめてみて、新しいアイデアはどしどしご相談してみましょう!
PROFILE
仙台市は、震災後の社会起業家・女性起業家の増加を背景に、「女性活躍・社会起業のための改革拠点」として国家戦略特区に指定されています(2018年3月時点で10区域)。現在は主に「社会起業」「女性活躍」「近未来技術実証」「医療」「公共空間利活用」の取り組みを進めていますが、他にもさまざまな『規制改革メニュー』を活用することで、これまでの法などの枠組みを超えた新たな試みを進めています。