06/17WED

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2019年5月27日から6月4日までの約一週間、泉パークタウン寺岡地区(仙台市泉区寺岡)でEVバスの試走に関する実証実験が行われました。主催は、東北大や自治体、企業でつくる産官学組織「東北次世代移動体システム技術実証コンソーシアム」。

今回はその実証実験に関わった東北大学の鈴木高宏教授と、仙台市のIT企業であるアンデックス株式会社の菊地忍氏に、「自動運転技術とは?」というお話を伺いました。

<お話を伺った方>
菊地 忍(きくち・しのぶ)氏/アンデックス株式会社 営業部 部長
鈴木 高宏(すずき・たかひろ)氏/東北大学教授 未来科学技術共同研究センター センター長補佐

泉パークタウンで自動運転の実証実験が行われた経緯とは

  • SENDAI INC.:泉パークタウン内で行われた自動運転の実証運転について教えてください。

  • 鈴木さん:2019年5~6月に行った実験は、住民の方々を対象に、10人乗りの小型低速EV(電気自動車)バスに試乗体験してもらうものでした。

    自動運転の導入にはまずはこうした車両を受け入れ、安心してもらうことが重要と考えましたので、バスは時速20km以下の低速で走行し、かつ運転手がハンドル操作を行いました。

  • SENDAI INC.:実験では、自動運転ではなかったのですね。

    将来的に自動運転が本格運用された場合も、バスはそれくらいのスピードで走るのですか?

  • 鈴木さん:はい。その場合、他の車との速度差が大きく生じるのが問題でしたので、このバスは極力生活住宅地内だけを走るようにコースを作りました。

    自動運転と聞くとどこでも自由に走れる車を想像されがちですが、イメージとしては路面電車に近いです。見えない線路が道路に敷かれていて、それに沿って車が走る、というものですね。

    車が走る速度としては遅いですが、実験の結果、徒歩よりは速く、生活道路をスムーズに移動できるので「移動手段として活用できそう」という声が非常に多くありました。

高齢者だけでなく、幅広い世代からのニーズ

  • SENDAI INC.:実験を行ってみて得られた成果や課題は?

  • 菊地さん:自動運転のターゲットは高齢者に限定されがちですが、意外と子どもを含めた若い世代からもニーズがあるとわかりました。

  • 鈴木さん:育児中の保護者の方や、幼稚園・小学校に通う子ども。そのように、ほんの少しの距離を移動するのも容易でない方々を助ける手段になるだろうと感じましたね。

  • 菊地さん:とくに、子ども達にウケが良かったですね。みんな、目をキラキラさせて追いかけてきましたよ。

  • SENDAI INC.:子どもは好きそうですね。一方で、保護者からは「なんとなく怖い」「不安だ」という意見もありそうですが……。

  • 鈴木さん:そうですね。子どもや家族に利用してもらうには、保護者の方に信頼してもらえる乗り物でなければなりません。

    そのためには技術の透明性を高め、仕組みをわかりやすく説明することが重要になると考えています。

    人間が作る技術に100%はありませんから、エラーが起こる可能性は常にある。「怖い」という感覚を持つのはとても正しいと思います。

    その上で、「こういう仕組みで動いているから、こんなエラーが起こるかもしれない」と理解してもらうこと、システムと使う人がコミュニケーションできるようにすることが大切になります。

    それをどう伝えていくかは、今後の課題ですね。

  • 菊地さん:そういった伝える技術にこそ、ITが活用できるだろうと思います。

自動運転が仙台の観光を変える

  • SENDAI INC.:自動運転が普及すれば、観光客の誘致にも活用できると言われています。

  • 鈴木さん:仙台の中心部だけでなく、秋保や松島、塩釜など仙台に隣接していて魅力のある場所はたくさんありますから、(既存の公共交通と組み合わせて)複数のスポットを繋げることで、エリア全体の魅力は増してきますよね。

  • 菊地さん:魅力ある各スポットをエリアとしてリンクさせ、エリア全体で充実した時間を過ごしてもらうという考えですね。

  • 鈴木さん:エリア全体を楽しむとなった場合、重要になるのが移動手段です。

    自家用車で周ることができたら良いですが、運転ができない方もいますし、ドライバーは景色を楽しむ余裕がありません。

    自動運転が普及してもっと自由に移動できるようになれば、仙台の観光事情はもちろん、人々の暮らしも大きく変化するでしょう。

    ただ現状の自動運転では、あらかじめ決められたコース以外を走ることはできないので、理想と現実にはまだギャップがあります。このギャップをどう埋めていくかも、大きな課題となるでしょうね。


鈴木教授とアンデックス社が共同開発した交通ナビアプリ『ANDナビ』

アンデックス社「出かけたくなる」スマホアプリの開発を行う

  • SENDAI INC.:今回の実証実験で、アンデックス社はどのような技術を提供しましたか?

  • 菊地さん:弊社では、バスが今どこを走っているのかをリアルタイムで表示できるスマートフォンアプリを開発しました。他にも、アプリ上でバスの乗車予約ができたり、周辺のお店の情報や公共交通機関の時刻表を表示させる機能も備えています。


マップ上に、周辺の店舗や公共交通機関(バス停等)のアイコンが表示されている

  • 鈴木さん:このバスは住宅地内の短い距離しか走れないので、もっと遠くへ行きたい場合は他の公共交通機関に乗り換えてもらう必要があります。そこと連携できる役割を持たせたんです。

    また周辺の施設の情報を見られるので、例えばバスを降りた先でランチする店をぱっと探したり、スーパーのセール情報をあらかじめチェックしておいたり、なんてこともできるように考えています。

    地域内の活動の一つひとつが便利になる、そんなイメージですね。


時刻表がアプリ上で確認できる


近くのバス停での発車時間が近づくと、画面上部にテロップが流れるため見やすい

  • 菊地さん:これは、住民の方々のラストワンマイル、もしくはファーストワンマイル(※)となるものなんです。
    (※:公共交通機関に乗るまでの徒歩圏が概ね1~2キロ内とされることから来る用語)

    他の公共交通機関に繋げるための「足」「橋渡し役」ですね。そうした連携機能を強めることで、家にこもりがちの年配の方でも外に出かけたくなるような、そんなサービスを提供しようと考えました。

  • SENDAI INC.:実証実験の参加者には高齢者の方が多かったようですが、スマートフォンやアプリに対するハードルの高さはありませんでしたか?

  • 菊地さん:それは大いにありました(笑)。ですがアプリに抵抗を示す方が多い一方で、自宅のパソコンでインターネットを利用する方も多いこともわかりました。

    なので、ウェブ上でアプリと同じサービスを提供できるシステムを作れば、利用者が増えるのではないか、という手応えを感じましたね。

自動運転技術をさまざまな分野にも応用できる

  • SENDAI INC.:自動運転の技術は、運転以外にも応用できるそうですが?

  • 鈴木さん:はい。一例として、地図を作ったり、積雪量を調べたりすることができます。

    自動運転車はLiDAR(ライダー)というセンサーを載せていて、それが周りをスキャンして道路や壁、木、人などの情報をデータとして収集しています。すると、走りながら三次元の地図ができていくんですね。

    毎日同じ道を走ることで、そこで起こる変化がすべてデータに残ります。新しい建物が建った、どれくらい雪が降った、桜が咲いた……とか、そういう変化が自動運転のセンサーで直ちにわかるのです。

    災害の話にまで広げると、がけ崩れが起こった、道路に穴が開いている、そういった情報を共有することもできます。


自動運転車に取り付けられたLiDAR(ライダー)(赤丸内の機器)

  • 菊地さん:まさにオープンデータですよね。

  • 鈴木さん:インターネットで繋がる車は「コネクテッドカー」と呼ばれ注目されています。IoTと同様に車が通信ネットワークで繋がることによって、一台の車が持つデータを社会全体でシェアできる、他の人に役立つデータとして活用できるわけです。

    自動運転を一人の便利のためと考えると高くつきますが、社会全体に役立つものととらえれば、非常に価値が高く、社会全体でそのコストを担えると言えるでしょう。

    今例に挙げた以外にも、仕組み自体は何かと何かを繋げる、橋渡しするものですから、運転に限らずさまざまな分野で応用できるはずです。ちょうど、X-TECHにも通じると思います。

未来の社会を地域の方々と一緒に考える

  • 菊地さん:皆さんには、22世紀のドラえもんの世界を想像してみてほしいのです。未来の人はどんな技術を欲しがっているか、どんな乗り物が受け入れられているか。

    我々だけでなく、住民の方々も一緒に未来の社会について考え、本当に必要なものを一緒に作っていく。そういう意識が非常に大切なんですね。

  • 鈴木さん:今あるものをベースにして、不足を埋めようとするのではなく、新しい乗り物や道具を手に入れたときに生まれる新しい発想が大切です。

    そこからいろいろな可能性が広がってきますから。自動運転や次世代モビリティに期待されるのは、まさにそういうことなのだと思います。

PROFILE

アンデックス株式会社

アンデックスでは高いIT技術を駆使して、システム開発、スマホアプリ開発、Webサイト制作などの事業を展開。 受託開発のみならず、自社独自のプロダクト開発にも積極的に注力しており、仙台市公認の子育てに関わるコンテンツを配信する子育て支援アプリ「まちのび」を開発。 また、「水産×ICT」をテーマに水温や塩分濃度などの海洋データを手元のスマホから確認できるアプリ「ウミミル」を開発し、販売パートナーのNTTドコモとの協業により、多くの漁協など水産事業者にも導入され、様々なメディアからも注目を集めています。 アンデックスは熱い情熱を持って、常に進化していくサービスを提供することで、地域から信頼を集める存在を目指すIT企業です。

未来科学技術共同研究センター

未来科学技術共同研究センター(NICHe:ニッチェ)は、産業界等外部との連携により、先端的かつ独創的な開発研究を行うことで、広く国内産業・地域産業の活性化に資することを目的に、平成10年4月に設置されました。大学の知的資源をもとに、社会の要請に応える新しい技術製品の実用化並びに新しい産業の創出を社会へ提案することを目指し、産業界等との共同研究の推進を図り、先端的かつ独創的な開発研究を行うことを目的としています。

未来科学技術共同研究センター

Photo:蝦名恵一
Words:岩崎尚美