06/02TUE

MEET UP

社会に出ても使える武器を
手に入れよう。
東北最大級のアプリコンテスト
『第6回DA-TE APPs!』に密着

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「IT部門、最優秀賞は『チームFishers』です」——。

2020年2月24日に仙台国際センターで開催された『第6回DA-TE APPs!2020』。グローバルラボ仙台やDA-TE APPs!実行委員会、仙台市が共催する東北最大級のアプリコンテストです。ITコンテストとゲームコンテストのふたつの部門に分かれ、制作したアプリケーションについてプレゼンテーションを行います。

プレゼンテーションが終わると、豪華審査員らから辛口のフィードバックが飛び交うなど、ITでの起業を志す学生の“登竜門”コンテストに。


審査員の表情も真剣そのもの

SENDAI INC.は、IT部門に出場した東北大学のチーム「全脳アーキテクチャ若手の会 東北支部(以下、wba東北支部)」にコンテスト前から密着。

『第6回DA-TE APPs!2020』に出場したきっかけや、出場を決めてからの彼らの苦悩、葛藤、コンテスト当日の様子をレポートします。

『DA-TE APPs!』に参加したきっかけは?

IT部門は、4チームが仙台IT企業の半年にもおよぶ徹底指導により、身近な課題を解決するためのアプリケーションを制作し、競い合います。

密着したのは「wba東北支部」。東北大学の学生ら5人で構成されるチームです。


前列左から深水一聖(ふかみず・いっせい)さん、木村昴(きむら・すばる)さん、後列左から高橋佑輔(たかはし・ゆうすけ)さん、樋口賢一(ひぐち・けんいち)さん、中屋悠資(なかや・ゆうし)さん

惜しくも最優秀賞を逃した彼らですが、まずは、『第6回DA-TE APPs!2020』に参加したきっかけを聞いてみました。

「以前開催された『SPAJAM』というハッカソンイベントに参加したときに、グローバルラボ仙台の方に『DA-TE APPs!にも参加してみたら?』とお誘いいただきました。それではじめて『DA-TE APPs!』に参加したのが去年。今年は2度目の参加になります」(中屋さん)

——そもそも「SPAJAM」にはどういう目的で?

「アプリケーション制作の経験がなかったので、自分で作ってみたいと思って。そのときは先輩と一緒に参加したんですが、ほとんど僕がつくる感じになって……でも、教えてもらいながらもなんとか一晩でつくりました。

アプリケーション制作の経験がなくても、頑張ればできちゃうんだなって自信につながりました」(中屋さん)

——その時も今回と同じメンバーで?

「いえ、このメンバーでの参加は今回が初めてです。僕は趣味程度にプログラミングをやっていたんですが、『DA-TE APPs!』はマネタイズをはじめビジネスに通用する技術が学べるので参加しました」(中屋さん)


ビジネスにも通用するスキルやマインドを身につけたかったそう

『DA-TE APPs!』では、UIやUXだけでなく、マネタイズをはじめとしたビジネス性なども審査の基準になります。アプリケーション制作未経験者でも、より実践に近い技術を身につけられるのが『DA-TE APPs!』の特徴のひとつなのです。

『DA-TE APPs!2020』までの軌跡

今回で2回目の参加となる中屋さん。11月に最終審査を通過。

『DA-TE APPs!2020』の幕が開けたのは、第1回企画オリエンテーションが開催された2019年9月7日。そこから半年間にわたってメンターによる指導が行なわれ、仙台国際センターの大舞台を目指します。

——半年の長期におよぶプログラムです。参加するのに躊躇はありませんでしたか。

「『半年は長いからつらい』と言われることもあるのですが、そんなことはありません。というのも、機械学習や人工知能などまだ経験のない技術でも、半年もあれば十分に覚えられる。
経験がなくても、勉強して実装までひと通りカバーできるので、半年という期間はちょうど良いんですよね」(樋口さん)


メンターが半年にわたってサポートしてくれるのもDA-TE APPs!に参加するメリット

——半年で実装までできるようになるんですね。プログラミングについてよく分からない人でもできますか。

「できます! メンターはもちろん、教えてくれるメンバーも揃ってますから。大会にエントリーしている人たちのSlackのグループがあって、なにか分からないことがあったらそこで質問すればチームの垣根を超えて教えてくれるんです。同じ環境にいる仲間同士なので聞きやすいんですよ」(樋口さん)

ほかのチームのメンバーと開発について議論するwba東北支部のメンバー

いよいよ『第6回DA-TE APPs!2020』本番!

それぞれのチームがそれぞれの思いを胸に、ついに『第6回DA-TE APPs!2020』の本番を迎えます。

当日は、各チーム4分間プレゼンテーションを行い、3分間審査員による質疑応答。審査員は、課題解決性や新規性、ビジネス性、プレゼン力をトータルに審査していきます。

4チーム中トップバッターは、SENDAI INC.が密着したwba東北支部。大勢の観客が見守るなか、堂々としたプレゼンテーションで魅了していました。


なかには、動体検知の共通ライブラリを制作したチームも

冷蔵庫の食材からレシピを提案!?

——惜しくも最優秀賞を逃してしまいましたが、堂々としたプレゼンテーションでした! 改めて、制作したアプリケーションについて教えてください。

「『Recipie+(レシピプラス)』といって、冷蔵庫に入っている野菜の鮮度に応じ、AIが最適なレシピを提案してくれるアプリです。

鮮度の悪い順に消費するようにレシピを提案してくれるので、提案どおりに料理をつくれば鮮度が悪くなって野菜が使いものにならなくなった……という事態を防いでくれます」(中屋さん)


冷蔵庫の食材からアプリが最適なレシピを提案してくれる

「忙しい主婦や学生の方にとってはレシピを考える手間がなくなるだけでなく、仙台に店舗を構える飲食店が考案したレシピを搭載しているので、毎日の食卓を豊かにしてくれるのも『Recipie+(レシピプラス)』の特徴のひとつです」(中屋さん)


フードロスの削減にも貢献できる『Recipie+(レシピプラス)』

たしかに、気付くと冷蔵庫がぱんぱんで「この野菜、いつ買ったっけ?」「まだ食べられるかな?」なーんて考えているうちに、野菜が食べられなくなってしまった……。忙しい方にとってはあるあるかもしれませんね。

wba東北支部の調査によると、実際、60.1%の方が「冷蔵庫にある食材からレシピを考えるのが面倒」と答えていて、そのうちの半数以上の方が、鮮度が分からず調理法に悩んでいるそう。それをAIの力で阻止してくれるのが「Recipie+(レシピプラス)」なのです。画期的!

——今回の『DA-TE APPs!』はマネタイズなどのビジネス性も審査項目に入っています。マネタイズはどうやって?

「基本的には無料で使用できるアプリケーションになります。ですが、月々のサブスクリプションとして食材管理機能や店主からのレクチャー機能などを追加で考えていて。その後は、たとえばスマート冷蔵庫などがスタンダードになってくれば、冷蔵庫に野菜を入れたら自動で写真を撮影し、レシピを提案してくれるなどと発展していくことを想定しています」(中屋さん)


マネタイズの部分も重要な審査項目

——開発にあたって苦労した点は?

「それぞれ経験のないことを担当したので、それぞれに苦労はあったと思います。全体としては、機能ごとに作業を分担したので、だからこそコミュニケーションが必要で……。本番直前はほぼ毎日集まって、なるべくコミュニケーションをとりながら進めました」(樋口さん)

大変だったことも含めて「すべてがめちゃくちゃ楽しかったです!」と元気に答えてくれたwba東北支部のメンバーたち。インタビュー中に見せてくれた笑顔がすべてを物語っていました。

慣れない手つきで調理をする様子。楽しそう

——来年開催される「DA-TE APPs!」への参加を検討している方に、どのように声をかけてあげますか。

「同じ学生なんだから、誰でもできるよ、と。プレゼンテーションもトップバッターで緊張しましたが、少々失敗しても気にする必要なんてないんです。失敗して当然なんですから。

その後の審査員からのフィードバックにも厳しいコメントがありましたが、もっともなことしか言われていません。それは素直に受け入れるべきですし、僕たちはやりたいことをやっているので、少々言われても気にしません」(中屋さん)

——やりたいこととは具体的に?

「今回でいうと、世の中を見わたしても、レシピ系のアプリケーションはあっても野菜の鮮度まで網羅しているアプリケーションはない。もし鮮度まで網羅しているアプリケーションをつくったら、日本で初のアプリケーションになりますからね。

だからこそ、胸を張れるアプリケーションをつくろうと。ゴールが明確なら、ハードルに感じる必要はないと思いますよ」(中屋さん)

社会に出ても使える武器を今から手にして欲しい。「DA-TE APPs!」を開催する意義

最適なレシピを提案してくれるだけでなく、フードロスにもつながる「Recipe+」。惜しくも最優秀賞を逃してしまいましたが、主催のひとりであるグローバルラボ仙台元GM兼NTT・ドコモベンチャーズの篠原さんの目には、「Recipe+」はどう映ったのでしょうか。


グローバルラボ仙台元GM兼NTTドコモ・ベンチャーズ所属で
毎年IT部門の審査員や学生へ熱い指導をしている篠原さん

——まずは、「Recipe +」について、どういう感想を持たれましたか。

「毎日献立を考えなくてはならない主婦にとって、AIが最適なレシピを提案してくれる、一見いいプロダクトに感じます。課題の提起は良いのです、解決策の検討が足りないと感じました。

家事や子育で多忙な主婦が本当に毎日野菜の写真を撮るでしょうか。管理することを面倒だと思う学生が、写真を継続して取り続けるでしょうか。

このようにまだまだ本サービスのターゲットがどのような生活スタイルをとっており、その人たちにとって、その課題がお金を払うほどの痛みなのかという部分に関しての検討が足りないと感じました。」

——確かにです。

「これは、社会人の大人でも未だに間違っている人が多いのですが、『プロダクトアウト』といって技術ありきでサービスを作ってしまうと、サービスができた時に誰に対しての何を解決するためのサービスか分からなくて、結果的に誰にも使ってもらえないことが良くあります。

全ては、ユーザーがどんなことで悩み、何が阻害要因となり困っているか、その課題で困っているユーザーの声を数多く聞き、そのユーザーがどれくらいいるのか確認することが大切です。課題に感じている人が1人だったらビジネスにはなりませんよね。

これらの考え方を『マーケットイン』と言いますが、ユーザーが頭を悩ませるほど課題に感じていたら、お金を出してでもそのプロダクトを使おうとしますよね。『Recipe +』に足りていなかったのは、そこかなと思います。」


ターゲットを再度洗い出すことが必要だと指摘

——その辺が足りなくて「最優秀賞」を逃してしまったと。

「そうですね。でも、実はこのコンテストは、勝ち負けは関係ないんです。『DA-TE APPs!』を通して、社会に出た時に使える“武器”を手に入れてほしいなって思っているだけなので。

多くの学生が、大学を卒業したら社会に出ると思います。でも多くの学生は、社会のことなんか何も知らないんです。学校でも教えてくれないんです。というか教えられる人が少ないんです。

現に社会人になって大学で勉強したことが今の職に活きているか?と質問すると、多くの社会人が、特に活きていないといいます。

独り立ちして、自分の給料を自分で稼いで、生計を立てていかなければならないのに、その社会がどんなところか、何をしているのか、どうやって給料が支払われているかを多くの学生は知らないまま、学校を卒業します。

そんなこれからの未来を背負っていく若者たちに自分でサービスをつくることが、どれだけ楽しいことか、また世の中にサービスを出していくことがこれほど難しく、それをお金にすることがどれほど難しいか、そういう社会のリアルを彼らに知ってほしくて僕らは、この活動を行っています。」

——武器を手に入れるため。

「この武器は、僕の中では学生にとって最強の武器だと思っています。例えばですが、就職活動って、たった20分の面接とたった1枚のエントリーシートで社会の最初の入り口が決まってしまいますよね。

多くの学生が就職活動でのPRを、大学で学んだことや研究したこと、バイトで頑張ったことなどを言う人が多いでしょう。でもそれって、全国の他の学生も同じことをやってるし、差別化という意味では、PRできてないですよね。

「私は、こんな課題を抱えているユーザーを助けたくて、こんなサービスを、こんな企業の人たちと開発しました」。企業の人事担当がどちらを採用するかは明白です。

このようにこのグローバルラボ仙台の活動と成果発表の場である『DA-TE APPs!』で得られるものは、今後の人生を左右するほど大きいものだと自信をもっています。半年間、学生のうちに大人から本気でしごかれ、仲間と共に悩みながら寝ないで開発したアプリだからこそ、 “武器”になると考えています。」


3連覇を果たした「Fishers」は、「DA-TE APPs!」で得た武器で“起業”という選択を取った

——最後に全国の学生に伝えたいことは

そうですね。学びは、人の真似から始まります。学生のうちから多く人(社会人や先輩後輩、友人やパートナー)と交流をしてみてください。きっと人の人生って、みんな違うんだってことに気づくと思います。

まずは人生のパターンをたくさんみること。そしてどんな人生が自分が今後歩みたいかを想像すること。最初はそれでいいです。社会人になった時に初めて自分のオリジナリティがでてきますよ。

そして学生という時間があるうちに、沢山のチャレンジと沢山の遊びを経験してください。

そして最後、歳をとって死ぬときに、“笑って死ねる人生”を歩んでくれれば、僕らがこの活動をしてきて良かったと心から思えると思います。

午後からのゲーム部門も大いに盛り上がった『DA-TE APPs!2020』。


フィンランド・オウル市から参加の3チームはオンラインでプレゼンテーションに参加

半年におよぶ長いプログラムは終わってしまいましたが、大会を通じ、ひとつの“武器”を手に入れた彼らの未来が楽しみで仕方ありません。


Photo:蝦名恵一
Words:幸谷亮