07/08WED

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大規模災害から命を守る
最先端テクノロジーを
凝縮!
仙台市×フィンランドハッカソンで
生まれた、仙台を救うアイデアの種

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2019年11月15日(金)、フィンランド共和国のICT企業が“防災・減災”をテーマに、災害時に市民や観光客を救えるアイデアを競い合う「Japan-Finland Bosai Tech Open Innovation Challenge in Sendai」が開催されました。

仙台市と経済産業省、JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構)が主催となって開催されたこのイベントで、表彰されるのはどんなプロダクトなのでしょうか。

どうして仙台市にフィンランドが?ICT世界トップクラスの国との交流

「ハッカソン」とは、“ハック(Hack)”と“マラソン(Marathon)”を組み合わせた造語で、ソフトウェア開発者が一定の期間、集中的にプログラムなどを開発してそのアイデアや技能を競うイベントのことです。

そしてちょっと馴染みのない「ICT」という言葉ですが、これは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションのことを指します。たとえば、ドローンなどはそれに当たります。

この日集まったのは、フィンランドのICT企業8社。でも、なぜフィンランドが仙台市に?

実は、仙台市は、フィンランド共和国及びフィンランド共和国オウル市と2005年にお互いの産業振興を目的に産業振興協定を締結するなど、深いつながりがあるのです。

無線通信技術発祥の地で知られるオウル市は、ノキア社をはじめとする400以上ものICT企業があり、ICT産業・教育においては世界トップクラスを誇る都市。

そんなフィンランド共和国のICT企業が、限られた時間内で“防災・減災”をテーマに技術を競い合いました。

評価ポイントは、
正しく、誰にでも理解できるように情報を伝えられるかどうか

プレゼンの前に、審査委員の仙台市危機管理室危機管理課の原 孝行(はら・たかゆき)さんに、今回の評価ポイントを教えていただきました。

「近年、全国的に大きな災害が多発しています。そういったとき、市民の皆さんには何よりもまず、安全な場所への避難を第一に考えていただきたいです。

現在でも防災行政無線のスピーカーは屋外に設置されていますが、大雨や風の時には聞こえにくくなりますし、スマートフォンを通した通知サービスもありますが、老若男女問わずに情報伝達ができるかというと、まだまだ課題があります

ですので今回のハッカソンでは、正しい情報を伝えられ、住民の皆さんが誰でも理解でき、適切な避難行動に繋げられるかどうか、に着目して避難情報をよりよく伝えられるサービスを評価したいと思います」(原さん)

楽しみながら防災を学べる!? 「Ikune」チーム

その中から、取材班が気になったプロダクトをいくつかピックアップ。まずは、スマートフォン向けアプリの「守護神」をご紹介します。

津波などの大規模災害は突然やってきます。その際、気が動転して間違った経路で避難してしまったら……。

こういった瞬時の判断が求められる場合でも、「守護神」を使えば、ゲームを通じて普段から避難場所や経路を覚えておけるので、いざとなったときでも安心です。

決められた地点にチェックインするとポイントをゲットできるなど、ゲーム性も含んでいるので、まるで「ポケモンGO」のように、楽しみながらトレーニングできるのも「守護神」の特徴。

それだけではありません。

東日本大震災のときもそうでしたが、大規模災害の際は通信が混雑し、インターネットにつながりにくい経験をした方も少なくないはず。その結果、避難経路を確認できずに被害に遭った人も……。

それを回避するため、「守護神」ではオフラインの状態でもマップを確認できる機能を搭載。大災害のときにも頼りになる存在なんです。

センサーが被害エリアを瞬時に推定!
避難を促進する「Gofore(ゴーフォア)」チーム

お次は、行政向けのプロダクトをご紹介します。一見すると防犯カメラのようなヴィジュアルですが、どんな特徴があるのでしょうか……?

じつはこれ、“あるセンサー”を付属した特殊なカメラで、センサーが津波を感知することで、津波のパワーや被害エリアを推定してくれます。

道路やビルなどあらゆる場所に設置しておけば、津波がきた際にもこのセンサーによって安全エリアと危険エリアを特定できるので、行政が的確な避難経路などを指示でき、逃げ遅れなどによる被害者を守ってくれるのです。

安全エリア、危険エリアにいるそれぞれの人数を把握できるのも、このセンサーの特筆すべきポイント。

危険エリアから安全エリアへ移動した人数もリアルタイムでわかるので、効率的に避難指示を出せるのです。これは画期的ですね。

取材班が注目したこの2チーム以外にも、出場チームが提案するのは、独自の視点が光るアイディアばかり。日々進化するテクノロジーを使うことで、今よりももっと住みよい、安全な町作りへとつながるんですね。

グランプリは誰の手に?
仙台市が求める「人の命を守る」サービス

8チームのプレゼンが終了し、審査タイムへ。真剣に討論を重ね、表彰チームを選出します。

参加者投票1位!
ゆるキャラが仙台を救う「REMOD(リモド)」チーム

いよいよ結果発表の時間です。まず、参加者投票でもっとも票を多く集めたチームの表彰です。獲得したのは、ゆるキャラを用いたユニークなアイディアの「REMOD(リモド)」。

仙台市のいたるところにゆるキャラのオブジェを配置し、そのオブジェが津波などの災害時には避難場所や避難経路を教えてくれる、という優れものです。

多言語に対応していて、日本語で話しかけたら日本語で、英語で話しかけたら英語で答えてくれるのも特徴のひとつ。かわいいうえにできる子すぎて、なんて尊いのでしょう。

地元の人なら避難場所などが頭に入っているかもしれません。でも、仙台市内への外国人訪問客数が年々増加している昨今、災害時に彼らを助けるのは、こういったゆるキャラなのかもしれません。

災害といったシリアスになりがちなキーワードにゆるキャラを採用するなんて、なんとも海外の企業らしいですよね。

栄光のグランプリ!
観光用アプリが安全まで提供してくれる「SECAPP(セキャップ)」チーム

そしてみごと優勝したのは、観光客向けのスマホアプリを開発した「SECAPP(セキャップ)」チーム。

空港などに貼ってあるこのQRコードを読み込めば、空港に到着した観光客がそのままスマホにアプリをインストールでき、そのまま観光スポットを検索できたりと通常の観光に役立てるだけでなく、緊急時にはさらに頼れるアプリとなっています。

津波や台風などといった災害情報も知らせてくれ、避難ルートや安全な建物までナビゲーションしてくれる機能も搭載。

ただ、避難できたとしても安心できないのが大規模災害の怖いところ……。

でも、このアプリがあれば大丈夫。孤立しても、アプリを通して救急センターに救助要請を送れるだけでなく、救急センターからのメッセージも受信できるんです。

今後は、実用化に向けた動きを加速するのはもちろん、すでに存在するプラットフォームを基に開発しているので、実用化されるのもそう遠い未来ではないかもしれません。

2日間にわたり開催された「フィンランドハッカソン」。最後はみんなで記念撮影をして幕を閉じました。こうして海外の技術を肌で感じられるのも、積極的なIT利活用に取り組む仙台市だからかもしれませんね。


Words:幸谷亮