09/04FRI

PEOPLE

AI時代に必要なのは「ゴリラ力」?
東北からAIの未来を切り拓く、デジタルゴリラ

近年、AIの急速な進化によって、「AIに仕事を奪われるのでは」「IT業界で働くには専門知識が必要なのでは」と不安を抱く学生や若手社会人も少なくない。
 
しかし、東北・仙台を拠点にAI導入支援やAX(AI Transformation)を推進する株式会社デジタルゴリラは、その考えとは少し違う視点を持っています。
 
「AIを使いこなすために本当に必要なのは、人間らしい力です。」
 
そう語るのは、管理部長として会社を支える松田 菜央(まつだ・なお)さん。大学では図書館情報学を学び、司書資格を取得。人材会社や公共施設での勤務を経て、現在はAI企業で管理部門の立ち上げにも携わっています。
 
一見するとAIとは縁がなさそうなキャリア。しかし、その歩みの先にあったのは、「AI時代だからこそ、人間にしかできないことがある」という確かな実感でした。AI時代を前向きに生きるヒントを探ります。

「デジタルゴリラ」という社名に込められた、人間らしい強さ

  • SENDAI INC.:まずは社名について伺わせてください。「デジタルゴリラ」という名前は、一度聞いたら忘れられないほどインパクトがあります。初めて耳にしたときは驚いたのですが、この社名にはどんな思いが込められているのでしょうか。

  • 松田さん:ありがとうございます(笑)。

    実は2021年に会社を立ち上げた当時、Twitter(現X)で社名を募集しました。そのアンケートで一番票が集まったのが「デジタルゴリラ」でした。

    事業を重ねる中で、この名前に私たちならではの意味を見出すようになっていきました。現在、企業のAI導入やAX・DXの支援を行っていますが、デジタルを広めるためには、実はアナログな力が欠かせないと思っています。

    例えば、ChatGPTを導入しただけで社員の皆さんがすぐ使いこなせるようになるかというと、そうではありません。「今までのやり方で十分じゃないか」「AIは少し怖い」と感じる方もいらっしゃいます。そういう方に寄り添いながら、一緒に進めていくには、戦略を考える力だけではなく、周りを巻き込む力や信頼を築く力が欠かせません。

    私たちは、そうした"アナログな力"をもってDXを推進できる存在を「ゴリラ」と呼んでいます。そうして、遊び心から生まれた名前が、事業を重ねる中で会社の考え方を体現する言葉に育っていきました。詳しくは、弊社の考え方がまとまっている記事を共有させていただきますので、ぜひご覧ください。

  • SENDAI INC.:最初はユニークな社名という印象でしたが、お話を伺うと、会社の考え方そのものを表す名前なのですね。

  • 松田さん:社内でも「その行動、ゴリラらしいね」や、「ゴリラマインドだね」という言葉が日常的に飛び交っています。

    弊社では「ゴリラマインド」はミッションを一人ひとりの日々の行動に落とし込むための行動指針として設けています。日々、全員が「私たちらしい行動とは何か」に立ち返るための共通言語なのです。

AIを導入するだけでは変わらない。現場に寄り添うAX支援

  • SENDAI INC.:現在はどのような事業を展開されているのでしょうか。AI企業というイメージはありますが、具体的なお仕事についても教えてください。

  • 松田さん:もともとはデジタルマーケティング会社として創業しました。

    2024年にAI事業を立ち上げて以来、AIを会社の事業の柱に据えてきました。現在は、法人向けのAI導入支援を中心に、AI研修や、法人向けAI学習プラットフォーム「デジゴリAIラーニング」を提供しています。

    AIが組織に定着すれば、資料作成やデータ整理など、これまで多くの時間を要していた作業をAIに任せられるようになります。そこで生まれた時間を、思考を深める仕事や、人と向き合う仕事に充てることで、一人ひとりの生産性が高まり、時間にも気持ちにも余裕が生まれます。その余裕が、新たな挑戦や仕事の楽しさへとつながっていく。私たちがミッションとして掲げる「日本人がウホッと働ける社会」は、その先にあると考えています。

  • SENDAI INC.:研修だけではなく、学び続けるためのeラーニングまで提供されているのが印象的でした。そこにはどんな背景があったのでしょうか。

  • 松田さん:これまで100社以上のお客様へAI導入支援をしてきた中で、AI活用がうまくいく企業には共通点がありました。社員の皆さんが、「主体的にAIを学び続ける文化が育っていること」です。
    一度研修を受けただけでは、業務の中でAIを使い続けることはなかなかできません。毎日少しでも触ることで、「こういう場面でも使えるのだ」という発見が増えていきます。

    それならば私たちが、学び続けられる環境そのものをご提供しようと考えて立ち上げたのが「デジゴリAIラーニング」です。
    教材を作っているのは、実際に現場で企業支援をしている社員です。導入支援の中で繰り返しいただいてきたご質問や、つまずきやすい場面を起点に約180本の教材を設計していて、現場の経験をそのまま反映していることが特徴です。

  • SENDAI INC.:机上の知識ではなく、現場で培ったノウハウが詰まっているから、実践につながりやすいんですね。

  • 松田さん:そうですね。私たち自身が現場で感じてきたことを、そのままお客様へ届けられるのが強みだと思っています。

「まずやってみる」が、成長への一番の近道だった

  • SENDAI INC.:ここまでAIのお話を伺っていると、ITや情報系を専門に学ばれていたのかなと思っていたのですが、実際は未経験だと伺いました。これまでどんなキャリアを歩まれてきたのでしょうか。

  • 松田さん:大学卒業後は、人材会社や宮城県内の文化施設で働き、20代後半で個人事業主として独立しました。その後、2024年にデジタルゴリラへ正社員として入社し、管理部門の立ち上げに携わりました。

  • SENDAI INC.:管理部門も未経験だったそうですが、不安はありませんでしたか。

  • 松田さん:もちろんありました(笑)。経理も法務も人事も経験がありませんでしたし、「自分にできるのだろうか」という気持ちはありました。

    ちょうど会社がAI事業へ本格的に舵を切った時期で、役員からは「毎日AIに触れるように」と言われていました。しかし、当初はAIに関する知識がなく、何から始めればよいのかも分からない状態でした。それでも、試行錯誤しながら毎日使い続けるうちに、少しずつ活用の幅が広がっていきました。

    こうした経験を重ねる中で、AIは自分の可能性を広げてくれる道具だと感じるようになりました。

  • SENDAI INC.:AIを学ぶというより、一緒に仕事をしながら覚えていった感覚なのですね。

  • 松田さん:そうです。実は弊社では、決まった研修カリキュラムやマニュアルを用意していません。

    「まずやってみる」という社風が根底にあることに加え、少人数の会社であるため、知識を身につけてからではなく、実践を通して学ぶ姿勢を大切にしています。また、AIは進化が速く、学んだ知識がすぐに古くなってしまうことも理由の一つです。分からないことがあればAIや周囲に相談しながら、実践の中で身につけていきます。

    仕事の任せ方にも段階があります。私も当初は、細かなタスクを終えるたびに上長の確認を受けていました。その後、5割程度まで進めた段階で方向性を確認する形へと変わり、現在では「〇日までに完了させます」と伝えれば、進め方も含めて任せてもらえるようになりました。

    弊社には、「自由は、責任の総量」という考え方があります。責任を引き受けた分だけ、裁量も与えられます。挑戦の結果、失敗したとしても、最終的な責任は経営陣が担うため、社員は安心して「まずやってみる」ことができます。

  • SENDAI INC.:小さな積み重ねが自身の成長や周りからの信頼につながっていくということですね。学生や若手の方にも、とても参考になるお話ですね。

  • 松田さん:ありがとうございます。裁量が広がるほど責任も増えますが、それ以上に仕事がおもしろくなります。そして、当社には、メンバーの成長を後押しする制度と、仲間の活躍を全員で喜び合う文化があります。そうした環境があるからこそ、一人ひとりが思い切って挑戦できます。その挑戦を支えてくれる存在として、AIがすぐそばにいてくれる。それが、今の私たちの働き方なのだと思います。

AIにできないのは「空気を読むこと」。
人間だからこそ生み出せる価値

  • SENDAI INC.:AIの進化によって「人間の仕事がなくなるのではないか」というニュースもよく目にします。実際にAIの最前線で働かれている松田さんは、AIにはできなくて、人間だからこそできることは何だと感じていますか。

  • 松田さん:私は、「空気を読むこと」だと思っています。AIは本当にたくさんのことができますし、これからもできることは増えていくと思います。でも、その場の雰囲気や相手の表情、これまで積み重ねてきた関係性、言葉の行間にある思いをくみ取ることは、今のAIにはまだ難しいと感じています。

    例えば営業なら、AIは見やすい資料を作ることが得意です。でも、その資料を渡しただけで契約につながることはありません。お客様と何度も対話を重ね、「実はこんなことに困っていたんです」と本音を引き出し、一緒に課題を整理していく。その積み重ねがあって初めて、「この人にお願いしたい」と信頼していただけるのです。だからこそ私は、人と向き合い、信頼関係を築くことは、人間にしかできない仕事だと思っています。

  • SENDAI INC.:「AIは仕事を奪う存在」というイメージを持っていましたが、お話を伺っていると、むしろ人と人との関係性がこれまで以上に大切になっていくように感じます。

  • 松田さん:そうですね。例えば、私の場合、「社員みんなの成長につながる企画を考えて」といった、答えが一つではない抽象的な仕事を任されることがあります。

    これをAIに相談すると、一般的なアイデアはたくさん提案してくれます。ただ、実際に採用できる企画に落とし込むには、まだ人間ならではの深掘りや工夫が必要です。それは、「最近〇〇さんは少し元気がないな」とか、「このメンバーにはこんな伝え方が合いそうだな」といった、日々一緒に働いているからこそわかる一人ひとりの状況や関係性までは、AIだけでは捉えきれないからです。

    会社の空気や役員の思いをくみ取り、それを社員に伝わる形へ落とし込んでいく。そうした役割は、やはり人間だからこそ担えるものなのかなと思います。

  • SENDAI INC.:AIと競争するというより、お互いの得意なことを生かして役割分担していくイメージですね。

  • 松田さん:おっしゃるとおりです。私たちは社内でも、「AIはあくまで道具」という話をよくしています。AIが作った資料や文章をそのまま提出するのではなく、「本当にこれで伝わるのか」「お客様に合っているのか」を最後に判断するのは人間です。

    そして、AIが出した答えに責任を持つのも人間です。だからこそ、「AIを使いこなす力」と同じくらい、「AIが出した情報を正しく判断する力」が大切だと考えています。

学生時代に磨いてほしいのは、「感性」と「経験」

  • SENDAI INC.:では、これから就職活動を迎える学生や、IT業界を目指す若い世代には、どんな力を身につけてほしいと考えていますか。

  • 松田さん:社内でもよく話し合うテーマなのですが、AI時代に大切なのは4つあると考えています。

    一つ目は「基礎知識」です。

    AIの活用によって短時間で学べるようになり、プログラミングや文章作成などの専門的なスキルを、誰もが身につけやすい時代になりました。私自身、プログラマーではありませんが、AIを活用してGoogle Apps Scriptを作成し、業務の効率化に役立てています。

    一方で、「作れること」だけでは差がつきにくくなったからこそ、AIが導き出した答えが正しいか、目的に対して適切かを見極める力が求められます。その判断を支えるのが、基礎知識や基本的なビジネススキルです。

    二つ目は「着眼点」です。

    AIは答えを出すことは得意ですが、何をやるかを決めるのは人間です。答えを出すこと以上に、問いを立てることの価値が高まっている時代だと感じています。「この作業はAIに任せられないか」と、日々の業務に潜む課題に気づけるかどうかで、AIの活かし方は大きく変わります。

    三つ目は「美意識」です。

    例えば、AIが作るデザインにはどこか「AIっぽさ」があり、文章も、一定の温度で書かれてきます。間違ってはいないけれど、それを受け取った相手の心が本当に動くのかどうか。
    「この出力は本当に美しいのか、相手に伝わるのか」を突き詰める感覚が、これからますます必要になっていくと思います。

    そして四つ目が「こだわり」です。

    AIの答えは、どうしても平均的なものに寄りやすいです。そこに「ここだけは譲れない」「これが自分らしさ、あるいは自社らしさだ」という軸を定めることで、初めてその人の仕事になります。こだわりこそが、その人ならではの価値や個性につながっていくのだと思います。

  • SENDAI INC.:技術を学ぶこと以上に、自分自身の感性を磨くことが大切ですね。

  • 松田さん:学生の皆さんには、ぜひ好きなことを見つけて楽しんでほしいですね。映画でも音楽でも旅行でもスポーツでもかまいません。何かに夢中になって、「楽しかった」「悔しかった」「感動した」という経験をたくさん積んでもらえると良いのかもしれません。私自身、そうやって心が動いた経験が、自分だけの価値観や判断軸になってきたので、そう感じているのかもしれませんが……。AIには真似できない、その人らしさにつながっていくと思います。

ここからは視点を仙台・東北へ。「最先端は東京にある」というイメージを覆し、仙台からAI時代の新たな可能性に挑むデジタルゴリラ。地域だからこそ生み出せるAI活用の未来や、仙台で働く魅力、そして学生・若手へのメッセージに迫ります。

東北だからこそ、AI活用の未来をつくれる

  • SENDAI INC.:ITやAIの仕事というと、どうしても「東京へ行かなければ最先端に触れられない」と考える学生も多いと思います。仙台で働くことについては、どのように考えていますか。

  • 松田さん:確かに、そう感じる方は多いですね。実際に、東北の企業はDXやAI活用が全国と比べて遅れている、という統計データもあります。

    しかし、裏を返せば、AIやDXを必要としている企業が、それだけ目の前にあるということです。弊社は自治体や大学との連携、東北最大級のAIコミュニティの運営など、地域に根ざした活動を重ねてきました。地域に拠点と信頼があるからこそ、東北の企業の変化と成長に伴走できる。そこに、弊社が東北で挑戦する意味と、この仕事のおもしろさがあると感じています。

  • SENDAI INC.:課題が多いということは、それだけ必要としてくれる人も多いということですね。

  • 松田さん:はい。それに、「地方だから最先端に触れられない」という時代でもありません。弊社のCAIOは生成AI「Claude」を開発するAnthropic社の公式アンバサダーを、東北で初めて務めています。他にも大学で講師をしたり、行政と一緒にプロジェクトを進めたりする機会も増えています。

    オンラインで世界中とつながれる時代なので、仙台にいながら全国のお客様と仕事をすることもできます。

  • SENDAI INC.:むしろ、今は東北から新しい文化をつくっていけるタイミングなのかもしれませんね。

  • 松田さん:私たちもそう思っています。

    生成AIが登場してから、まだ3〜4年ほどしか経っていません。最も長い経験を持つ人でも、そのキャリアは4年程度なのです。誰もがスタートラインに近い、これからの業界です。だからこそ、今から挑戦を重ねることで、仙台・東北におけるAI活用をリードする存在になれると考えています。

    そのチャンスが今の東北にはあると思います。

AI時代だからこそ、人間らしく働こう

  • SENDAI INC.:最後に、AI時代に不安を感じている学生や若い世代へ、メッセージをお願いします。

  • 松田さん:AIが進化するほど、「自分の仕事はどうなるのだろう」と不安になる人は増えると思います。しかし、私はそこまで心配しなくてもいいと考えています。AIの進化を過度に恐れる必要はなく、むしろ、自分の可能性を広げられる時代になったと感じています。

    採用では、私たちはスキルだけを見ているわけではありません。「東北をもっと良くしたい」「誰かの役に立ちたい」という想いを持っている人と、一緒に働きたいと思っています。そうした熱量は、さまざまな経験や挑戦を重ねるなかで育まれるものです。

    なので、失敗を恐れず、たくさん挑戦してほしいと思います。その経験こそが、AIには決して真似できない、自分だけの財産になるはずです。

まとめ

AIの進化によって、働き方は大きく変わり始めています。しかし、デジタルゴリラが見据えている未来は、AIに仕事を奪われる社会ではありません。AIを道具として使いこなし、人間だからこそできる価値をさらに高めていく社会です。
 
そのために必要なのは、ITスキルだけではなく、人と向き合う力、課題を見つける力、美意識、そして挑戦し続ける姿勢。デジタルを推進するためのアナログな力こそ、これからの時代に欠かせない力だと言えるでしょう。
 
東北だからこそ挑戦できることがある。仙台だからこそ未来を切り拓ける仕事がある。
 
AIを恐れるのではなく、自分の強みを磨きながら、AIとともに新しい価値を生み出していく。デジタルゴリラの取り組みは、これからの時代を生きる私たちに、多くの示唆を与えてくれます。

PROFILE

株式会社デジタルゴリラ

株式会社デジタルゴリラ(本社:宮城県仙台市)は、AI技術とマーケティングを掛け合わせた支援を展開するコンサルティング企業です。Web広告運用やSEO、SNS運用をはじめ、AI研修や導入支援、AIエージェント開発まで幅広く手掛けています。累計200社以上の支援実績を誇り、戦略立案から実装・改善までワンストップで提供。最先端のAI活用と伴走力で、東北から全国のお客様の事業成長に貢献しています。

株式会社デジタルゴリラ

Photo:SENDAI INC.編集部
Words:笠松宏子