09/27WED
PEOPLE
可野の部屋
「仙台出身取締役が語る、
場所にとらわれない働き方」
左:株式会社ニューロマジック 木村隆二さん / 右:エンスペース株式会社 可野沙織(インタビュアー)さん
デザインコンサルティングを通じて社会に貢献する「株式会社ニューロマジック」。東京を拠点に、仙台、沖縄、オランダ・アムステルダムにオフィスを構えています。
取締役COOの木村隆二さんは会社全体を統括しながら、自身でも営業活動やプランニング等、幅広い分野で活躍していらっしゃいます。今回は木村さんに仙台に拠点を設けた理由や組織運営に大切なこと、場所にとらわれない働き方などについてお話を伺いました。
仙台に拠点を持つことで広がるビジネス
木村さんは仙台出身。普段は東京勤務だが、仙台を離れたからこそ仙台愛がより深くなったと話す。
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可野さん:木村さん、本日はよろしくお願いいたします。まずニューロマジックさんの事業内容と事業拠点について教えていただけますか?
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木村さん:ニューロマジックはデザインコンサルティング事業がメインの会社です。サービスデザイン、ブランドデザイン、コミュニケーションデザインの領域で事業を行っています。東京を拠点に、仙台、沖縄、オランダのアムステルダムにオフィスを構えています。
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可野さん:ニューロマジックさんは、この「enspace」に入居してくださっています。そもそも仙台にオフィスを構えた経緯はどのようなものだったのでしょうか?
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木村さん:私は仙台が好きで、仙台で何かしたいとずっと思っていました。今の会社に入る前はミュージシャン活動をしていて、宗さん(さとう 宗幸さん)と共演も果たしました(笑)。それぐらい仙台が好きなんですが、東京で仕事していると、なかなか仙台と関われなくて……。
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可野さん:仙台の人なら誰もが知っている宗さん、すごいですね……!
仙台は、東京から新幹線で約一時間半の距離で、政令指定都市であるという点から、東北に拠点を持つ上でぴったりだと思います。それに、自然豊かで、食事もおいしいので、暮らしやすいですよね。 -
木村さん:そうなんです。仙台市ではスタートアップがどんどん盛り上がっていて、仙台市も支援に力を入れています。2018年に仙台市さんと株式会社楽天野球団さんが開催したアイデアソンに参加した時には、弊社のアイデアが評価されて実証実験の機会をいただけました。デザインの領域を少しずつ広げた結果、仙台でのビジネス機会につながっていきました。
2018年のアイデアソンで発表する木村さん。見事採択となり、実証実験へとつながった。
仙台で健やかに暮らしながら緊張感のある仕事に向かう、バランスの取れた人生
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可野さん:自治体や企業とも少しずつ接点ができてきて、仙台にも拠点を構えることになったのですね。では拠点を構える上で、enspaceを選んだ理由を教えてください。
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木村さん:enspaceは仙台のビジネスコミュニティでは最も大きく、出会いの場として最適でした。当時enspaceに入居していた企業からロゴデザインの発注をいただくなど、実際にビジネス機会も増えました。その後、仙台市とイベントを共催したり、TGA(Tohoku Growth Accelerator)のメンターに選んでいただいたりして、いろいろな企業と出会うことができました。
※TGA(Tohoku Growth Accelerator)についてはこちらの記事もご覧ください。 『仙台から世界を目指す。TOHOKU GROWTHAcceleratorの卒業生はいま』
enspaceでは、スタートアップを中心に多くのビジネスパーソンが交流している。
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可野さん:enspaceに拠点を持つことで、仙台との関わりが広がってきて嬉しいです。仙台で仕事をする魅力とはなんでしょうか?
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木村さん:私は、仕事と生活が密接である必要は必ずしもないと思っています。要は、「仕事が東京だから、東京に住まなきゃいけない」という縛りはもはや無くていいはずなんです。
住むのにちょうど良い街である仙台で健やかに暮らしながら、東京の規模感が大きい緊張感のある仕事をする、という生き方があっても良いと思います。プレッシャーが大きすぎる仕事や緊張が長く続く仕事は、長期的には持ちません。心身ともに健やかに仕事に向かうことがすごく大事ですし、それがすごくバランスがとれた人生だと思っています。 -
可野さん:私も昔、祖母のそばで暮らしたい、という夢がありました。当時、ニューロマジックさんみたいな会社があったら、祖母のそばで暮らしながらチャレンジできる仕事ができていたかもしれないですね……!
IT SIDEでは、場所にとらわれない働き方を実践するために行っている、ニューロマジックならではの取り組みについてお伺いしました。
場所にとらわれない働き方とは?
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可野さん:どこにいても仕事ができるという考え方がすごく素敵ですね。実際に働いていらっしゃる方は例えばどのように仕事をされているのでしょうか。
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木村さん:ポーランド人の社員は蒸し暑い日本の夏が苦手なので、夏の期間はポーランドで仕事をしています。他には、ベルリン在住のベネズエラ人メンバーがいます。2人とも地域も国籍も関係なくフルリモートで働いています。子育てをしながら、リモートで働く女性も多いです。時短勤務や急な休みにもフレキシブルに対応できるように会社側も配慮しています。子育てをしているスタッフが多いので、積極的に協力する企業文化ができています。そのおかげか、弊社の社員の約6割が女性で、管理職も約5割が女性です。
女性の活躍に可野さんも興味津々です
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可野さん:仙台市も市長が女性で、女性が活躍できる地域なので、もっとこれから共創できる部分がありそうです。リモートワーク中心の業務体制で、今までに課題や問題はなかったのでしょうか?
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木村さん:課題としてはコミュニケーションの問題が一番大きいですね。
きちんとコミュニケーションが取れず、組織への不満に発展したり、自分を責めたりしないよう、1on1ミーティングを高い頻度で実施しています。また、外部の専門家を入れて、心理的安全性を担保し、自立した組織を目指すプロジェクトをやっています。座学やディスカッション、アイデアを実践して試すこともありますよ。 -
可野さん:私も東京本社の会社で働いた時、本社の社員との話題にズレが生じ、少し疎外感を感じることもありました。こころのケアは重要になりますよね。他にも組織を運営するうえでの課題はありますか?
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木村さん:あとはナレッジマネジメントですね。
出社型の良いところは、隣の席の会話が聞こえてくるところ。自然と新しい情報や知識が入ってきていました。でも、リモート化により、どんなことが行われているかが分かりにくくなってしまいました。
現在、社長が提唱しているのが、アジャイル・SECI・チームマネジメント(ASTM)です。アジャイルとはプロジェクトの進め方の一つです。
SECIは、野中郁次郎先生が提唱した暗黙知を形式知に変換するモデルのことで、シェアや実践を何度も繰り返すことで、知識を進化させていきます。
例えば、新しい発見や情報をオンラインホワイトボードの miroのようにみんなが見える場所で常に更新し続けることで、個人の暗黙知を組織全体のものにしていくという取り組みです。今はこれを習慣化できるように試行錯誤中です。
社員が各地に分散している分、コミュニケーションや知識のマネジメントがより重要になるのだという
デザインでもっと輝ける仙台を
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可野さん:最後に、仙台での活動について今後の展望を教えてください。
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木村さん:今後は、デザインの民主化を進めていきたいと思っています。民主化というのは、広く皆さんにデザインの力が行き渡る状態のことです。
デザインの領域はまだまだ「この人に頼むから良いものができる」といった職人的な面があります。そういう人に頼むと当然費用が高くなります。
そうすると、資金力がある人だけがデザインの効果を享受することになっていまいます。でも、デザインの力があればもっと会社や組織は輝けるはずなんですよね。
我々としては知見をたくさん蓄えて、地方の方々にデザインを活用してもらう機会を提供していきたいと思っています。自動化したり、メソッド化したりすることで、コストを下げることができれば、仙台の企業さんとも一緒にお仕事をすることも増えていくと思います。
生まれ故郷の仙台に貢献できれば嬉しいです。
短時間でしたが、たくさんお話をお伺いすることができました。全てを載せることができないのが本当に残念です。木村さん、ありがとうございました!
PROFILE
enspaceは、2018年6月に東北6県のハブ都市である宮城県仙台市にオープンした「東北最大級のシェアオフィス・コワーキングスペース」です。「【Glocal Factory】多様な“縁”が交差するGlocal(グローカル)な世界をつくる。」をビジョンに、企業の事業成長を支援し、誰もが挑戦できる環境(ファクトリー)から東北の発展を目指します。
可野 沙織(かの・さおり)
エンスペース株式会社 シニアマネージャー IT企業にて、様々なクライアントのカスタマーサポートセンターを立ち上げ、人材採用から運用構築・サービス改善を責任者として従事。人材育成や組織マネジメントの経験を活かし、宮城県内を中心に若者向けのコミュニティ活動や活動支援を行っている。 エンスペース株式会社では、enspaceのコミュニティマネージャーとして参画し、若手育成・起業家を支援する環境構築、海外事業の新規立ち上げに従事。
ニューロマジックは1994年創業の、デザインコンサルテイングと各種クリエイティブを提供する会社です。 「EXPERIENCE AGENCY」をスローガンに、DX・SX推進、サービスデザイン、WEBインテグレーションなどを駆使して、「ふさわしい体験の創造」をお手伝いしています。
enspace
Photo:SENDAI INC.編集部
Words:笠松宏子